ITサービスの品質=情報システム部門の作業品質+外部ベンダーの作業品質
アウトソーシングという言葉を頻繁に耳にするようになり、すべてのことを自力(内製)でまかなっている情報システム部門は、今日ではほとんど見なくなりました。新しいシステムの企画や業務設計といったコアコンピタンスな領域はまだまだ内製が主流ですが、ジョブ管理やシステム監視、サーバルームの設備運用などは社外のベンダーに委託している企業が大半を占めます。
言いかえれば、自社の社員だけではなく、社外ベンダーの協力があってこそ、情報システム部門の業務は完結するようになったということです。
このような状況下では、情報システム部門の社員だけをしっかり管理していたとしても、ベンダー側の作業品質が悪ければ、情報システム部門全体の作業品質低下につながることになり、ベンダー作業品質をどれだけ高く保てるかが情報システム部門の重要なミッションになってくるわけです。
もちろん、そんなことは情報システム部門の方なら誰でも認識していることですし、そもそも最初のベンダー選定時に作業品質の高いと思われるベンダーに業務委託しているのですから、一見するとそんなに難しくないミッションに思えるかもしれません。しかし、最初の選定段階で高評価を得ていたベンダーがずっと高い品質を維持し続けるかといえば、そんなことはないのです。
よくあるのは、提案段階ではエース級の人材を投入して提案書もプレゼンも全力で臨むものの、契約を結んだ後はスキルに不安を覚える若いスタッフが体制の半分以上を占めていたという状況です。その結果、期待していたほどのパフォーマンスが得られず、作業の遅れや低品質な成果物に悩まされることになり、社内的には情報システム部門の評価も損なわれることになりかねません。
これはシステム開発だけではなくシステム運用にも当てはまる話です。むしろ、日々の業務に影響を与える分だけ、運用品質の低いベンダーの方が深刻とも言えます。
ベンダー側の立場からすれば、基本的には最善を尽くそうと努力しているのですが、ベンダースタッフのスキルもしくは工数が不足するために、サービス提供品質が低下する事態がしばしば生じます。まともなベンダーであれば、進捗管理でその危機的な状況が分かった時点で改善を試みることでしょうが、管理のいい加減なベンダーの場合、そういった状況に気付かず、事態のますますの悪化を招きますし、悪質なベンダーになれば、分かっていながらコスト抑制のために敢えて悪化に気づかないふりをすることもあるほどです。
たとえば、ベンダー担当者がユーザ要件を正確に把握していなかったり、テスト項目の洗い出しが十分ではなかったことで、システム機能は期待通りには実装されません。ベンダー内で再委託をしているケースでは、再委託先の品質には関知しないというプロにあるまじき態度を取られることで、実運用に耐えられないバグだらけのシステムが生まれてしまいます。
だからこそ、情報システム部門には、ベンダーの認識不足を指摘したり、嘘を見抜いて指導を行うというベンダー管理スキルが重要になってくるのです。