企業の成長にはマーケティング基盤の構築が不可欠
本セッションでは最初に、グローバルで活動する唯一のBI専業ベンダーであるマイクロストラテジーの石井元氏が登壇し、同社製品の概要を紹介した。2011年1月公表のガートナーの評価では、オラクル、マイクロソフトに並ぶBI業界のリーダーと位置づけられている。その要因として石井氏は、大量データ、大量ユーザーに対し、拡張性を持って対応できる製品を提供していることを挙げる。また、モバイルのBI環境にいち早く対応したことや、ハイパフォーマンス追求戦略、サポートに対する評価も高い。日本法人の設立は2003年7月で、2010年の日本市場で40社弱の新規ユーザーを獲得している。
続いてスピーカーがTISの田島泰氏に代わり、SIerの立場からマイクロストラテジー社のBI活用事例が披露された。今回のプロジェクトの背景には、少子高齢化と消費に消極的な若者の増加など、複合的な要因で国内市場が縮小し続けていることがある。そこで企業が取り得る主な戦略は、コスト削減、競争力強化、海外市場の開拓の3つ。まずコスト削減は、すでに多くの企業が、品質や競争力とのトレードオフになりまねないレベルまで取り組んできている。つまり企業が成長し、生き残るためには売上を向上させるしかない。そこで必要になるのが、情報を分析して市場を理解するための、ITによるマーケティング基盤の確立である。
田島氏が事例として紹介した携帯のコンテンツプロバイダーは、会員の70%が20歳代の女性というエンタテイメント系の有名サイト。携帯コンテンツは成熟期に入っており、前年比マイナス成長に入り始めた。既存会員を維持しながら新規会員を獲得し、リテンションを増やさない限り、売上はアップしない。
携帯契約者の情報はキャリアが独占しており、プロバイダーがいかに会員の情報を把握するかが課題だった。しかし従来のシステムはサービスや顧客の情報、アクセス履歴などが複数の小さな情報系DB内に散在しており、レポートを作成するためには、定型帳票や非定型データを人間の手で探す必要があった。そのため、コンテンツに対するアクセス情報や商品の販売状況の月次レポートを作るのに、半月以上かかっていた。それを評価し、新たな戦略を練っていたのでは、スピードが要求される携帯Webビジネスにおける競争に勝てない。
さらにレポートの詳細について現場に問い合わせると、元データの所在が分からないため、回答に非常に時間がかかっていた。また業績が伸びていないのに、各部門からの数字はバイアスがかかり報告は良いことが書いてある。それを判断するための全社統一した数字データが無いという状況だった。そのため様々な戦略、特にマーケティング戦略を精緻に判断できない状態が続いていた。