アプライアンスはOLTPの世界にもやってくる
安いから性能もそれなりかと言えばそんなことはない、とパフォーマンスについても自信も見せる。既存システムを今回のアプライアンスに単純に置き換えるだけでも確実に処理は速くなり、検索時間は簡単に数分の1程度にはなるとのこと。このHP Enterprise Data Warehouse Applianceで利用されているのは、Microsoft SQL Server 2008 R2 Parallel Data Warehouse(以下 SQL Server PDW)という製品だ。これはMPP (超並列プロセッシング) 型のアーキテクチャで、サーバーノードを追加することで大きな拡張性が得られる。現状で、CPUは120コアから最大480コアまで拡張可能であり、数テラから数百テラを超えるサイズのデータウェアハウスも十分に構築可能とのこと。
また、並列処理に加え性能向上に大きく寄与しているのが、SQL Server 2008 R2から強化されたデータ圧縮機能だ。圧縮により大規模なデータが扱えるようになるだけでなく、ディスクIOが減り大幅な性能向上も図れるとのこと。「既存データウェアハウスで扱うデータの多くが数値データなどのため、圧縮率はかなり高くなる傾向があります。テラバイト規模だと思っていたシステムが、SQL Serverに入れてみたら数百ギガバイトに収まったということもあります」と北川氏。
データウェアハウス関連の機能については、SQL Serverの次期製品「Denali」でもかなりに強化がなされるとのこと。なかでも北川氏の一押しは、カラムナインデックス(カラムストアインデックス)だ。「Oracle Exadataのカラムナインデックスよりも本物」と語気を荒くする。Denaliでは必要なフィールドだけでなく、計算結果だけを持ってくることができるので、よりフィルタリング効果が高くなるはずだと主張する。
Microsoftは、将来的に今回のデータウェアハウスとBIのアプライアンスに加え、OLTPのアプライアンス製品も提供する予定だ。これは、早ければ2011年の下半期には市場に登場するようだ。Oracle Exadataのように1台でOLTPもデータウェアハウスもまかなうというものではなく、OLTP専用のものとなる。アプライアンスの波は、データウェアハウスの領域だけでなく、今後はOLTPの世界にまでどんどん広がっていきそうだ。
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データウェアハウスの世界を、アプライアンスの存在が活性化させていることは間違いない。今回は、SIで独自の仕組みを構築するのかアプライアンスで行くのかの選択ではなく、どのアプライアンスを選択するのかに確実にシフトしていることを、肌で感じるインタビューとなった。
アプライアンスを選択する際に、どのポイントを重視すればいいのか。単純に製品を横並びにしてスペックを比較するのではなく、自社の戦略に合うのはどういう機能、性能で、かつそれを手に入れるにはどのくらいのコストをどのくらいの期間に亘り捻出できるのか。価格が安いに越したことはないが、ただ製品価格が安ければそれで良いというものでもない。導入時の費用だけでなく、運用管理の手間とコスト、次にアプライアンス製品を更新する際の手間とコストまでを、十分に考慮し賢く選択する必要がありそうだ。