2012年6月11日に実施された「ビズジェネカンファレンス2012」のカンファレンスレポート「経営視点のビジネスモデル・ジェネレーション」(PDF版)を、アンケートにお答え頂いた方全員にもれなくプレゼントいたします。
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サービス化する経済の流れのなかで注目を集める「サービスデザイン」
iPhoneに代表されるプラットフォーム型のプロダクトが市場での大きなシェアを確立し、従来のようなプロダクトとサービスの垣根を考えること自体が無意味になりつつある現在、「サービスデザイン」という分野に注目が集まっています。
サービスデザインは、デザイン思考のビジネスへの応用形の1つで、文字通りデザインの対象をサービスとしています。サービスを利用する人の体験価値を重視し、包括的な視点でサービスデザインを行っていくための一連のプロセスと手法群が、研究、実践されています。
日本では、昨年あたりからようやく注目が集まり始めた分野ですが、その歴史は意外と古く、2001年には、live|workという最初のサービスデザインコンサルティング会社がロンドンで開業していますし、2004年には、サービスデザインの研究者や専門家たちの国際的ネットワークであるサービスデザイン・ネットワークが活動を開始しています。
こうした動向の1つの要因としては、1990年代頃から全世界的にサービス産業の比率が増えてきていることも挙げられます。
経済産業省の「通商白書2012年版」を参照すると、1990年の段階でサービス産業の比率は62.9%だったのに対して、20年後の2010年にはその比率は70.0%にまで達しています。
アメリカではその比率はさらに高く、1990年ですでに75.1%、2010年には78.2%と8割近い割合を占めています。
こうしたサービス産業の比率が高まってきたことに加え、モノより体験へと価値がシフトしてきた社会の変化も、サービスデザインへの注目を集めているもう1つの要因といえるでしょう。
体験価値が重視される社会において、モノとしての商品を購入するという体験より、サービスをその都度利用するという体験のほうが頻度は高くなります。顧客との関係性(きずな)を重視したい場合は、同じモノでも、商品として顧客に提供するよりも、サービスとして提供した方がよいケースもあります。
たとえば、Zipcarなどのカーシェアリングに代表されるシェアリングサービスなども、従来は商品として購入されていたものを、いつでも好きな時にアクセスして利用できるようにしています。そして、サービス提供者と利用者の間の繋がりを、付加価値として積み上げていけるようなビジネスモデルになっています。
また、冒頭にもあげたiPhoneのような、ユーザーにもアプリやコンテンツの開発者にも開かれたプラットフォームなどは、もはやプロダクトとサービスを分けて考えること自体が意味をなさなくなったといえる実例でしょう。Google(Android)やAmazon(Kindle)なども含めて、こうしたオープン・プラットフォーム型のサービスを中心としたビジネスモデルは、その体験価値を高めるのが自社の活動だけでなく、プラットフォーム上でビジネスを展開する無数のパートナーの活動によってもなされるため、その競争優位性はなかなか競合他者の追随を許しにくくなる点は前回の記事でも指摘したとおりです。
こうしたこともあって最近では、私達にご相談いただくお仕事も、新規のプロダクト開発よりも、サービス開発のお話が増えてきている傾向にあります。そうした具体的なサービス開発のプロジェクトを進めるうえで、サービスをビジネスとしてデザインするための方法として実践的に研究が進められてきたサービスデザインの体系は、まだまだ発展途上の点も多々あるとはいえ、非常に役に立つ手法なのです。