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もう1つのリーン・スタートアップ-マネジメントの第二世紀に向けて

(第9回) 


イノベーションの創出に関しては、これまで新しい発想をどのように生みだすかというテーマで語られる傾向がありました。しかし、最近では、「新しい発想をいかに実行に移すか」が議論されるようになってきています。そんな「イノベーションの実行」という観点も含め、今回は昨年来話題となっている「リーン・スタートアップ」という手法を、既存の企業における新規事業の立ち上げという観点から改めて取り上げてみようと思います。

既存企業にとってのリーン・スタートアップ手法

 私が担当している記事としては、今回が2013年の最初のものになります。本年もこの連載では、大きな変化の時代を企業組織やビジネスパーソンが生き抜くためには何を考え、どう行動すればよいかを考えていければと思っております。旧年に引き続き、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、そんな2013年の最初の記事となる今回は、リーン・スタートアップという手法を一般的に語られているのとは少し違った角度から取り上げることからスタートしてみようと思います。

 皆さんも肌で感じていらっしゃるように、現在のビジネス環境はますます不確実性が増してきています。ものすごいスピードで市場環境は変化し、次にどこが勝者になり、何が起こるのかもまったく予測がつきません。どんなに安定してみえる企業でも、将来的なビジネスの持続性を考えれば、同時に複数のイノベーションに投資することが避けられない状況です。

 そうした不確実性の高い環境で、企業が複数のイノベーションのための投資を極力無駄なく進めようとするとき、リーン・スタートアップの手法が有効だと考えています。

 一般的なイメージだと、リーン・スタートアップの手法はベンチャー企業向けのものと考えてしまいがちです。

 ですが、『リーン・スタートアップ』の著者エリック・リースも以下のように書いているように、その手法は、既存の企業がこの変化の早い市場において、変化に敏捷に対応していくためにも必要不可欠となってきていると思われます。

企業は成熟するにつれて無気力や官僚主義がはびこるとよく言われるが、必ずしもそうではない。基礎を正しく構築すれば、敏捷性と学び指向、イノベーション文化を保ったままリーン・スタートアップが大きくなり、リーン・エンタープライズになれるはずだと私は考える。

 

                                         エリック・リース『リーン・スタートアップ』

 現在は、既存企業が1つの事業で市場優位性を保つことができる期間が、どんどん短くなってきています。常に自社を新しく生まれ変わらせるための努力をし続けることが、必須となっています。それゆえ、規模の大小に関わらず、多くの企業が現在大きな収益源になっている既存事業の運営へと資源を傾けるだけでなく、同時に将来収益の柱となるような新たな事業の開発にも投資を行い、両者をいかにバランスさせるかに苦心しているのが現状でしょう。

図1:既存事業と新規事業をどうバランスさせるか?

 前者の既存事業の成果を最大化するためのマネジメントに関しては、程度の差こそあれ、ほとんどの企業がその方法を身につけているかと思います。しかし、後者の新規事業の開発については、その内容がイノベーティブなものになればなるほど、どうすれば効率的に資源配分が行えるかがわからず、悩んでいる企業は少なくありません。

 ここにベンチャーに限らず、従来から事業を続けている企業においても、リーン・スタートアップの手法が求められる理由があると思うのです。繰り返しになりますが、新しい事業を立ち上げ、軌道に乗せるプロセスへと費やす資源をいかにして無駄なく配分していくか、この点への回答が必要な状況にあります。

次のページ
既存事業の「パフォーマンス・エンジン」がイノベーションの実行を阻む

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この記事の著者

棚橋弘季(タナハシヒロキ)

棚橋弘季(たなはしひろき) 株式会社ロフトワーク所属。イノベーションメーカー。デザイン思考やコ・デザイン、リーン・スタートアップなどの手法を用いてクライアント企業のイノベーション創出の支援を行う。ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」。著書に『デザイン思考の仕事術』 など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4463 2013/10/16 11:59

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