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経験から学ぶ、災害に強いデータベースシステム構築

企業システムにおける「事業継続性」や「災害対策」といったキーワードは東日本大震災を期に現実味と重要性が高まってきている。いまは実践的かつ実効的なノウハウだ。富士通株式会社 中山昌宏氏は自社の被災経験も交えながら、ミッションクリティカルシステムにおける高信頼のシステム要件とその実現方法を解説した。対象製品は主に富士通のSymfoware Serverおよびそのアプライアンス製品となるFUJITSU Integrated System HA Database Readyとなるが、ポイントとなる考え方は他製品でも参考になるだろう。

データベース災害対策は「データ」「時間」「コスト」が鍵

中山昌宏氏
中山昌宏氏

 東日本大震災で富士通はFMVを製造している富士通アイソテック(福島県伊達市)が被災した。多数のパソコンや部品が激しい揺れで床に落下するほか、天井のエアコン落下やダクト破損など設備も大きなダメージを受けた。当初は復旧まで数ヶ月を要すると見込まれていたが、実際は2~3週間ですんだ。それまでのBCP対策が功を奏した実例だ。

 データベース災害対策で鍵となる項目は「データ」、「時間」、「コスト」。特に大事なのがデータ。致命的な例として東日本大震災での戸籍データの消失をあげた。このときは、役所ごと津波で被災しただけではなく、バックアップまでも水没して戸籍データを消失してしまった。中山氏は「データは喪失してしまうと取り戻すことができない」とデータ保護の重要性を強調した。

 それから時間とコスト。これらは兼ね合いでもある。復旧までに必要な時間はどのくらいか。どの時点までデータを戻せるか、戻す必要があるか。またコストはどこでも有限なので、災害対策のためにどれだけコストをかけられるかも計画や実装をする上では重要な観点となる。可能な限り盤石な体制にしておきたいものの、「1000年に1度あるかどうか」など発生の可能性が低いリスクに対して、無尽蔵に予算をあてるわけにはいかないのが現実だ。

 データ、時間、コスト。これらを実際のシステム要件と優先度に合わせて設計していくことになる。中山氏はパターン別のデータベース設計例を示した。

 例えば商品取引システム。取引会社マスタや商品マスタを参照して取引データが蓄積され、そこから売上が集計されるというパターン。この場合にはマスタや直近の取引をまず先に復旧する必要がある。それまでのバックアップがあるデータ、集計など再作成できるものは後回しにしてもいい。

鮮度が大事なデータか、存在が大事なデータか
鮮度が大事なデータか?
存在が大事なデータか?

 すぐに復旧しなくてはいけないデータは「遠地のデータベースに複製を作成」しておくようにする。具体的にはデータベース機能を用いてログを遠地の副系データベースの転送して反映することで常に複製を作成しておくのだという。(ミラーリング)。後から復旧してもいいデータは「遠地にバックアップとして退避」する。なおログとは「差分データ管理簿」と中山氏は説明する。製品により呼称は異なるものの、更新履歴を記録したもので定期的なデータバックアップ以降のデータを復旧するのに欠かせないものだ。

 富士通のSymfowareなら、データ復旧の優先度ごとにグループを割り当て、ログの複製やバックアップなど運用方法を分けることができる。例えばグループAは復旧の優先度が高いため遠地の副系データベースにログを転送・反映し、グループBはログを遠地にバックアップ、グループCは別データから再作成可能なので遠地バックアップはしないといった具合に分類する。

 サーバーの冗長化も定番かつ有効な手段だ。運用系(本番系)サーバーのハードウェアが故障したら待機系サーバーに切り替えるクラスタ方式(共用ディスクのデータベースを待機サーバに引き継ぐ)と、データベースをミラーリングして異常時にはサーバーとデータベースをまるごと切り替えるミラー方式がある。ミラー方式ではデータを確実に保護でき、かつ高速に切り替えることができる。

災害や故障だけではない、安定稼働を支える技術

 災害や故障など突然のダウンだけではなく、普段からの安定稼働も重要である。安定稼働を妨げる要因はさまざま。月末や業務の締め日、何かのきっかけでアクセスが集中するようなときに性能劣化が起きやすい。爆発的な処理量増加に対して制限をかけるリミッター的なものを施しておく必要がある。また、障害復旧時には的確な対処ができるような準備も必要だ。早く回復させようとする作業者の焦りが二次的なトラブルを呼び、ささいなきっかけから致命的なトラブルに発展してしまう例もある。回復までの運用規定があれば防ぐことも可能だろう。

 負荷分散機能にはさまざまなアプローチがある。データのパーティショニング、ログの分散(Symfoware独自機能で「スケーラブルログ」という)、サーバー分散による処理能力拡張(ロードシェア)がある。

 さらに最近ではさらなる高性能化を目指し、メモリやSSDの活用幅が広がってきている。割り当ての目安はデータの性質だ。主に、アクセス頻度が高い読み込みにはメモリ(DRAM)、アクセス頻度が高く書き込みが発生するデータにはSSD、アクセス頻度が低いデータにはHDDと分けて最適化を図る。

 パーティショニングとログ分散も合わせ、SSDを活用すると秒間50万件の書き込みを実現できた例もある。オンラインシステムの安定稼働に役立てられた事例では、レスポンスが高負荷時には30秒だったところを常に3秒以内へと短縮できたという。

  ***

中山氏は「富士通は今後もデータベース技術を進化させ、お客様・社会・生活を支えたい」と話す。日本企業ゆえに国内で培った豊富な実績があり、また震災や国内事情を熟知した上での信頼性への取り組みは説得力がある

 関連URL

 ・FUJITSU Software Symfoware
 ・FUJITSU Integrated System HA Database Ready

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4885 2013/06/25 12:56

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