アジャイル、継続的デリバリー、そしてDevOps
2日めのキーノートの頭に登壇したのは、ロバート・ルブラン氏。「重要なのはITのケイパビリティではなく、ビジネスのケイパビリティだ」と語る。最近のIBMは製品群、ソリューション群の分野について語る時には、ケイパビリティ(能力)という言葉を用いることが多い。
Innovateは、IBMの数あるイベントの中でも、Rationalのソフトウェア開発系を中心にするイベントだが、近年はソフトウェア開発にとどまらず、ビジネスの変革がテーマとなっている。2日目は、開発の速度と効率を高めイノベーションを生み出そうというメッセージを反映し、ルブラン氏が露払い的にアジャイルとDevOpsを語り、続いてエリック・リース、ウォズニアックがリーン・スタートアップとイノベーションを語るというストーリーのようだ。
「顧客の経験を迅速に開発にフィードバックすることが競争力を生む。今Webでどのような反応があるか、ソーシャルでどのように語られているかの情報を常に収集し、ソフトウェア開発のライフサイクルに取り込むことだ。継続的な改善、継続的なデリバリーと迅速なリリースがビジネスの価値をもたらす。」(ルブラン氏)
たとえば、米国の最大級の自動車販売サイトであるcars.comは、常にユーザーの反応をフィードバックし1年で400以上の更新をリリースしたという。Webビジネスの競争力は、改善と機能強化のスピードに比例する。以前のようなアプリケーションのバージョンアップのサイクルと違う点だ。当然、そこには変更に伴うリスクの管理なども生じる。体系化し、顧客、ビジネスオーナー、開発・テスト、運用のすべての関与者をつなぐライフサイクルが、IBMのDevOpsの考え方であるという。
最近、話題になっているDevOpsとは、一般に開発(Dev:Developer)と運用管理(Ops:Operation)の協調によるアジャイルな方法論だが、IBMがここで語るDevOpsは、運用(Ops)だけでなく、顧客からのフィードバックを含んだビジネスサイクルとして位置づけているようだ。その戦略の一貫として最近買収した、モバイル開発のワークライト(Worklight)、テストツールのグリーンハット(Greenhat)、Web分析のコアメトリックス(Coremetrix)、顧客分析のティーリーフ(tealeaf)などの製品群もこの方法論の中に位置づけられている。その仕上げともいえるのが、このイベント少し前に買収された、リリース&デリバリ自動化のアーバンコード(Urbancode)である。(IBMのDevOpsとアーバンコードについては、次回に紹介する。)
続いて登場したのがエリック・リース氏。『リーン・スタートアップ』は起業の方法論としてベストセラーになったが、もともとの背景にあるのはアジャイル型のWeb開発の方法論である。そしてリーン・スタートアップのオリジナルは、エンジニアリングと顧客フィードバックによるマーケティングを統合した「顧客開発モデル」という手法であることから、先にルブラン氏が述べたIBMの開発方法論とうまくつながる。