前回は、アパレル店での洋服の直しを例に、「変動費型のビジネス」と「固定費型のビジネス」の違いについて考えました。今回は、「コスト削減」について考えてみます。コスト削減することで利益が増加するという発想をしがちですが、正しいでしょうか。特に固定費の削減は、付加価値を減らし、事業が縮小していく恐れがあることを、連載の中で、たびたび指摘してきました。縮小均衡にならない利益につながるコストダウンのコツを具体的に考えてみましょう。
本連載筆者による、「決算書」の読み方・活かし方の基本

ビジネスパーソンが「決算書」を理解することは何の役に立つのでしょうか?特に現在、重要視されているのは、非経理・非財務部門の方にとっての「財務諸表」の理解です。営業という立場では、取引先の与信管理をすること、取引先へ説得力をもった提案をすること、などに役に立ちます。また、規模の大小に関わらず、「プロジェクト」を動かす際には、既存事業・新規事業ともに「決算書」を読み解く力が必要で、武器になります。本シリーズ講座では、そのような力を「ビジネス会計力」と定義して、プログラムを用意しました。第1弾講座の「決算書」では、全ての基礎となる財務諸表の読み方と活用方法を、1日で理解できるよう解説します。前提知識は一切不要の決算書講座です。
日時:2014年1月30日(木)10:00~17:30(受付開始は9:30)
参加料:税込:34,650円(33,000円+税)
会場:株式会社翔泳社(東京・四谷三丁目)
お申込・詳細 ⇒ こちら
「良いコストダウン」と「悪いコストダウン」を見極めるポイントを考えよう
次の(1)~(8)は、利益を生みだすために行う(または行う必要がある)コストダウンの事例です。これらの事例は、何をコストダウンしようとしているのでしょうか。コストダウンの性質を基準に、2つに分類してください。
(1)コンビニのバックヤード(商品倉庫や事務室など)では、売り場のレイアウトをイメージして、商品をストックするようにしています。バックヤードで取り上げた(ピッキング)商品を店舗のどこに陳列するか、店員が探す手間を少しでも軽減するためです。
(2)大手スーパーでは、自社物流センターを作り、メーカーや卸からの商品を1ヶ所に集め、店別に仕分けすることで、多頻度配送、小口配送に対応しています。
(3)飲食店などのサービス業では、仕事の繁閑に対応するためにパートを活用しています。
(4)家庭の家事代行サービスは、競合他社との受注競争が激しく、顧客に提示する家事代行サービス料の値下げが常態化しています。社員が行うサービスなら利益は大きくなりますが、社員の手が足りないときに、業務を外部委託して事業を拡大します。
(5)大手のレストランチェーンでは、セントラルキッチンという加工工場で、食材のカットなどの下ごしらえを行ないます。これによって店舗では、プロでなくても調理が簡単にできるように工夫されています。
(6)電子部品などを受託生産するEMS(電子機器の受託製造サービス)は、大量に生産することで、製造原価を下げ、価格競争力をアップさせています。自社工場を持つメリットを活かしているわけです。
(7)大手メーカーでは、部品を共通化し、製造原価の引下げを狙っています。また中小企業では共同仕入を行なって、仕入原価を引き下げています。大手小売では、大量一括仕入によって、仕入原価を下げています。
(8)フルサービスの珈琲店が人気です。コーヒー1杯で、何時間店にいても文句を言わないという居場所の提供という付加価値サービスを提供しています。食事に関しては、パン、卵、キャベツなど原材料の種類を絞り込んで、メニューを開発しています。
次のページに進む前に、ご自身でコストダウンの性質を基準に、2つに分類してみてください。次ページ以降、詳細を解説します。
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千賀 秀信(センガ ヒデノブ)
公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...
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