「ディッキーズ」日本法人設立とERP短期導入におけるコンセプト
「ディッキーズ」はアメリカのテキサス州で生まれたワークカジュアルブランドで現在、世界110か国以上で展開している。日本及びアジアへの初進出は1994年からで、伊藤忠商事とライセンス契約を締結することで実現した。基本的に卸売が中心だが、「グローバルの中で、アジアでは小売をもっと強いものにしたい」という判断がなされ、2008年に中国法人を上海に設立。製造から小売までを手がけるSPA(製造小売業)のモデルで参入した。
日本では2012年9月に吉祥寺、2014年2月に新宿にオンリーショップがオープンしている。日本ではブランド小売の売上高が2008年から5年で3倍増の100億円。中国では11倍になっている。
その中で、日本法人の設立は2011年7月で、2012年1月1日から事業を開始している。その背景についてウィリアムソン・ディッキー・ジャパン・リミテッド日本法人副社長の松岡洋平氏は、「日本と中国、他の地域も含め、デザイン、商品を統合していこうという事業戦略がある」と語る。それは2011年3月に発生した東日本大震災を受けながらの投資決定でもあった。
そのアジア連携と、アメリカ本社との財務管理連結を支えるグローバル事業基盤を構築するために必要と判断されたのがERPの導入だった。会社設立と同時進行で半年後の初回出荷を実現するため、業務を垂直立ち上げすることになった。そのため「とにかくスピードにこだわる必要があった」(松岡氏)。
ディッキーズ日本法人のERP導入では、米国本社への約束であるコスト厳守に加え、以下の3コンセプトがあった。
- 人がシステムに合わせる
- 最優先は「セットアップの早さ」
- 少人数で運用可能な体制を作る
ERPパッケージには、基本的な業務が組み込まれている。「会社自体が新規立ち上げなので、まずはシステムが持っているものをそのまま使い、稼働後にチューニングすればいい」と考えた。また、セットアップが早ければ、ユーザーが習得する時間を確保できる。
「少人数でも運用可能」は震災時の経験も絡むが、会社の立ち上げでは、欲しい人材が採用できるとは限らない。同時に、少数精鋭の方が急速な事業変化に対応できると期待できる。特にファッション業界では業績の急伸と急落が起きやすいことから「多くの人数を抱えたくない」という方針があった。そうなると、一人の人間が複数の業務を需要に応じてこなせる体制を作っていく必要がある。以上のセットで、ERPの選定から設計をしていった。