採用するERPパッケージが決まったら、機能が不足している部分にどう対処するかがポイントになります。通常、不足機能は追加開発(アドオン)によって補うということになりますが、安易に開発すると莫大な開発工数が掛かったり、バージョンアップの足枷になったりします。この見極めがERP導入プロジェクトの初期段階における最大の懸案となります。
はじめに
ERP導入を検討する際に悩むポイントとして、ERP標準機能で実現できない機能のギャップにどう対処するかという問題があります。ERPはパッケージソフトですから、どの企業でも必ず機能面で過不足が生じます。ERPパッケージの選定にあたっては、業務要件とパッケージ機能の適用度を検証するフィット・アンド・ギャップ分析を行い、フィット率が6~7割以上ならば採用という具合に判断します。
採用するERPパッケージが決まったら、次にギャップとして機能が不足している部分をどうするかがポイントになります。通常は、不足機能を見極めて必要なものを絞り込み、不足機能は追加開発(アドオン)によって補うということになります。しかし、機能不足だからと言って安易にアドオン開発すると莫大な開発工数が掛かったり、バージョンアップの足枷になったりします。この見極めがERP導入プロジェクトの初期段階における最大の懸案となります。
ERP導入でアドオンはなぜ減らないのか?
ERP導入において、不足する機能をアドオン(追加開発)することは必然だと言えます。ベンダーの教科書通りの回答には、「アドオンは極力最小限にとどめましょう」という言葉がありますが、これはYESでもありNOでもあります。
アドオンには大きく分けると4つあります。アドオンで一番多いのは帳票に関するもので、社外のお客様向けの見積り書・請求書・財務報告を目的としたものから、社内で様々な業務管理用に必要なものまで、その数は数百から多い場合には数千種類にもなります。帳票の内容にもよりますが、一般的には1帳票あたり簡単なもので0.5人月程度の開発工数が必要となります(帳票ツールを利用すると開発効率は向上します)。
次に多いのが画面関係で、業務管理や部門管理などを目的とした様々な入出力画面や集計レポートの作成がこれに続きます。この2種類のアドオン開発は比較的軽いものが多いのですが、数が多くその絞込みが開発コストをコントロールするポイントになります。
3番目に多いアドオンは、他システムとの接続インターフェースに関するものです。業務上連携は必須となりますので避けられないアドオンですが、連携のやり方によって開発コストはある程度コントロールすることができます。また、バグによる障害やトラブルが多いのもこの部分になります。
最後はロジックに関するアドオンで、これはその企業独特の業務処理やこだわり機能などを追加開発するものです。標準機能ではほぼ確実に対応できないので、できればERP適用対象外としたいところですが、統合マスタ・統合データベースというERPの特徴を活かすために、あえてアドオン開発で不足機能を実現することを選ぶケースがあります。こうした業務プロセスや特有の機能ロジックの開発規模は大規模開発になりますので開発コストもそれなりのものになります。

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鍋野 敬一郎(ナベノ ケイイチロウ)
米国の大手総合化学会社デュポンの日本法人に約10年勤務した後、ERP最大手のSAPジャパンへ転職。マーケティング、広報、コンサルタントを経て中堅市場の立ち上げを行う。2005年に独立し、現在はERP研究推進フォーラムで研修講師を務めるなど、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスに従事している。
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