「最近のベンダーは、CIOとCMOをぶつけたがっている」
「日産自動車に入社して今年で10周年。『(成果を出して)5年で辞めると言っていたじゃないか』と友人にからかわれるが、確かに見通しは甘かった。10兆円規模の企業になるとこのくらいかかるということ。でも、まだまだこれからだと思っています」
ゲスト基調講演に登壇した行徳氏は、冗談交じりにそう語りながら、日産のこれまでの10年と、今後の展望を解説していった。ご存知のように、行徳氏は、日産のCIOとしてカルロス・ゴーン氏の改革をITの側面から支えてきた。ビジネス戦略「日産180」に続き2005年から始まった「日産バリューアップ」では、IT戦略「BEST」プログラムを推進し、IS/IT部門のグローバル統合と効率化の立役者となった。
現在は2011年からのビジネス戦略「Nissan Power 88」に基づいたIT戦略「VITTESSE」を進行中だ。上司は、ルノー・日産アライアンスのゴーン議長、日産CFOのジョセフ・ビーター氏、ルノーEVP兼COOのティエリー・ボロレ氏の3氏。担当する組織は、国内の日産グローバル IS/ITのほか、フランスのルノーIS、合弁のシステム子会社のルノー・日産インフォメーションサービシズ、インドのルノー・日産テクノロジービジネスセンター(RNTBCI)、ルノー・日産シリコンバレーオフィスの5組織にまで拡大している。ルノー・日産のグローバルCIOとして、IS/ITのすべてに責任を持つ立場だ。 行徳氏は、そうした自らの立場について、近年のITのキーワードの1つであり、シンポジウムのテーマにもなっている「デジタルマーケティング」に絡めながら、こう述べた。
「最近のベンダーはCIOとCMOをぶつけたがっています(笑)。CIOは仕事をしてくれないので、デジタルの分野では、CMOなどのビジネス側がリードして施策を実行すればいい、ビジネスを知っているので失敗もしないというわけです。でも、誰がやっても失敗はします。ルノーと日産は2社ですから、私のほかにも、CMO(最高マーケティング責任者)やCDO(最高デジタル責任者)がそれぞれいます。大事なのは、どっちがいいかや、プレイヤーとしての個人の評価ではなく、オープンなコラボレーションができるかどうかです」