文化を変えるのは、危険なまでに簡単なこと
数多く開催されたセッションのなかでも、マクマレン氏の講演は「人の変革」に焦点を当てたユニークな講演となった。マクマレン氏はまず、「変革はハイプ・サイクルを描く」として、こう切り出した。
「熱意をもった人々が始め、過剰な期待のなかで大きな盛り上がりを見せる。しばらくすると、期待の沿わない結果などから、幻滅期を迎える。ここで生き残るのはごく少数だ。その谷間を乗り切ると、回復期に入り、自律的に安定して成長していく」
ご承知のようにハイプ・サイクルは、テクノロジーが勃興するトレンドをわかりやすく視覚化し製品導入の助けとするためのツールだ。企業や組織の変革は、人間的な要素が強く、テクノロジーや製品とは対極にあるように思えるが、実際には、両者の間に大きな違いはないという。
「幻滅期の谷」を生き残ったテクノロジーが安定して長く利用されるのと同じように、企業自身が幻滅期を乗り越えさえすれば、変革が持続できるということを示唆している。
では、幻滅期に陥る要因であり、変革の障害となっているのものは何か。マクマレン氏によると、その大きな要因の1つが企業や組織の「文化」だという。部門間で異なる行動様式や振る舞いと言い換えることもできる。
たとえば、ソフトウェアの標準化やハードウェアの集約、人材の再配置、合理化などといった取り組みを進めるなかで、異なる振る舞いをする勢力は必ずといっていいほど現れ、変革の勢いを削いでいく。真っ向から戦いを始めることもある。そうした文化が、障害になって、変革が頓挫するわけだ。
こうした現場に幾度となく遭遇したCIOは、文化は固定的で不変的なものであるため、変えることは難しいと考えてしまいがちだという。そんななか、マクマレン氏は、こう問いかけた。
「企業や組織が長年育んでてきた文化は簡単には変わらないと考えているCIOが多い。しかし、もし文化が簡単に変わるものだとしたらどうか。しかも、それが危険なまでに簡単だとしたらどうか」