Amazon Web Servicesとはそもそもの戦略が異なる
肩を並べるとは言うものの、独走気味にトップを走るAmazon Web ServicesとIBMでは目指しているゴールが少し異なると感じる部分がある。そもそもSoftLayerが誕生するきっかけは「顧客の中には、自社データセンターにあるものをクラウドへと移行する動きがあることは分かっていました。そこでデータセンターにあるコンポーネントをAPIも含め月ベースで貸し出すことを考えたのが2004年のことです」と語るのは、SoftLayerのCEO ランス・クロスビー氏だ。これをビジネスで始めたのがSoftLayerなのだ。
そのSoftLayerが創業以来目指しているのは、たんにクラウドから安価にコンピュータリソースを提供することではない。真にエンタープライズで利用するためのクラウドを提供する。そう考え、その結果としてハイパーバイザー型ではなくベアメタル型のIaaSがあり、グローバル規模のデータセンターの設置とそれをつなぐ自前のバックボーンが生まれた。サービス提供形態も、シェアード型のマルチテナントもあればリソースを占有できる専用型もある。実際、SoftLayerの顧客の6割は専用型を選んでいるそうだ。
また、SoftLayerの大きな特長がサービスがブラックボックス化されていないことだともクロスビー氏は言う。グローバルなネットワークやストレージなどの構成要素も含め、どういう状況にあるかをユーザーが見られる透明性がある。データ管理に対する厳しい規制や貴重なデータを守るためのセキュリティ確保といった要件を満たす。それがBtoBの世界では求められ、それに応えようとしてきた結果がいまのSoftLayerのサービスの特長になっているわけだ。
「Amazon Web Servicesとは全体の戦略が違います。コンシューマ・グレードのクラウドを構築してきたのがAmazonであり、対してIBMはBtoBの企業です。我々には、直接のコンシューマ・カスタマーはほとんどいません。顧客企業の消費者にサービスを提供できるようにするのがIBMのクラウドサービスです。なので、そのために分散型にするであるとかセキュリティ性を高めるといったことを行っています。さらに、グローバル・ネットワークを提供し、ベアメタル型も用意しています。その結果、金融、医療、クレジットカード、航空業界でも利用されるようになりました。彼らから利用してもらえるサービスが提供できれば、真の意味でのエンタープライズ・レベルのサービスとなります」(クロスビー氏)