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「民間は行政の持っているデータの価値を奪いに来て欲しい」川島宏一氏が語るオープンデータの持つ潜在力


 これまで、国土交通省、インドネシア住宅省、北九州市、世界銀行、佐賀県CIOなど様々な要職を歴任し、現在は公共イノベーション代表を務める川島宏一氏。国や自治体などが保有するさまざまな公共データを活用する、オープンデータ推進の第一人者としても知られている。自治体でのCIOの役割や考え方、オープンデータの持つ可能性について川島氏に話を聞いた。

システム開発経験はなかったが、口うるさい”ヘビーユーザー”だった

 国土交通省では都市計画関連の業務に、世界銀行ではアジアの自治体の投資戦略づくりの支援などを行ってきた。さまざまなキャリアを積んできた川島宏一氏だが、今後は自治体のマネジメントの仕事がしたいと考えるようになっていた。そんなときに見つけたのが、「特定任期付一般公募」という形での佐賀県CIOの募集だった。これだと思い応募、採用が決まる。結果的には最初の3年の任期が延長され、2006年から5年間にわたり佐賀県でCIOの仕事をすることになる。

川島 宏一氏

▲川島 宏一氏 
株式会社公共イノベーション 代表取締役
佐賀県特別顧問(元佐賀県CIO)
オープンナレッジファウンデーションジャパン
共同創設者

 「CIOなのでもちろんITへの理解は必要でした。しかし、自治体CIOに求められていたのは、自治体の組織のなかで縦割りになっている業務間の壁を取り除いて連携効果を上げていくこと、つまり、行政組織の運用の部分でした。そういう面では、省庁や世界銀行などでの経験がフィットしたのではと思います」(川島氏)

 川島氏には、大規模ITシステム構築そのもの業務経験はなかった。しかし「私はITのヘビーユーザーです。かなり口うるさいユーザーだったと思います」と言うように、ユーザーとしてのIT活用経験は豊富だった。さらに、趣味ではあるがネットワークを組んだりプログラミングを行ったりといった経験もあった。実際、世界銀行にはかなり大規模なITシステムがあり、そのなかに世銀職員とアジアの自治体幹部とのコミュニケーションを活性化させるためのポータルサイトを構築する業務なども行っていた。

 「世界銀行として顧客である自治体の業務の効率を上げるには、必然的にITシステムを活用することになります。そういう意味では、IT構築のキャリアもあったことになるかもしれません」(川島氏)

 公募されていた佐賀県のCIOは、達成すべき業務ディスクリプションが明確だった。佐賀県全域において100%ブロードバンド接続可能とさせるといった、具体的な9つの実施項目が掲げられていた。それら9項目の目標は、任期中にすべてクリアした。とはいえ、苦労した面ももちろんある。たとえば、ブロードバンドを普及させるのは、自治体だけでできることではない。ベンダーやキャリアとともに活動し、多様なプロバイダーがいる中で実績となる数値を積み上げなければならない。

 「どういう状況になれば接続可能率が100%と言えるのか。行政サービスの成果の達成度を正確に測るのは難しいところがあります。どの指標についてどの水準までやるのか、結果の解釈をどうすればいいのか。厳格な客観性と説明責任が求められるところでした」(川島氏)

 苦労もあったが、もちろん感動するようなことにも出会った。たとえば「チャレンジドだれでもパソコン10か年戦略」という事業があった。これは、障がいなどでハンディのある人にもパソコンを使えるようにする取り組みだ。健常者ではなかなか気づかないアイデアなど、さまざまなものを駆使してパソコンを利用できるようにする。これが実現したときの障がい者の生き生きとした姿を見ていると、それは胸に響くものだったと語る。

 5年間の自治体のCIO経験を経て「いまの日本の行政の一番の課題は、行政職員のパフォーマンス評価にメリハリを付けられないことです」と川島氏は言う。どうしても横並び評価になりがちで、がんばって成果を上げた職員に対して、その成果に応じた報酬を提供することを柔軟にできないのだ。

 「自治体には地域の雇用の場を確保する面もあり、雇用維持自体が目的の1つでもあります。民間のように臨機応変にはできません」(川島氏)

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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