時代遅れのテクノロジーだった空港システム
パリの空港と言えばシャルル・ド・ゴール空港が有名だが、もう一つ大きな国際空港がオルリー空港だ。2015年11月7日、このオルリー空港で一時的に航空機の離着陸ができないシステムトラブルが起きた。
原因は、「DÉCOR」と呼ばれる航空管制システムとフランス気象局を接続するシステムの機能停止によるものだった。そして、このシステムは23年前に構築されたもので、Windows3.1で動いていたという。
オルリー空港の航空管制局では、これ以外にもWindows XPやUNIXなどの、いずれも20年ほど前に利用開始されたシステムが、今でも普通に使われていることが分かっている。我々からすれば異常とも思える旧システムだが、これには空港など交通機関の独自の課題があるのだ。
ファックスからiPadに移行したJR東日本
たとえば、JR東日本では2013年に約7,000台のiPad miniを導入し、運転士と車掌という乗務員が活用している。iPad mini導入による業務フローの変更はJR東日本のサイトに掲載されている。
以前は、輸送障害が発生したときに、A区からB区にファックスを入れ、届いたファックスをB区の管理者や駅員がプラットフォームまで持参し、乗務員に手渡しをする、という方法だった。ITに長けた読者から見れば、なんと旧式なのかと驚くだろう。
しかし、先出の空港も電車の運行も、365日動くのが当たり前であり、JR東日本の場合は電車が動かないのは夜中の終電から始発までのせいぜい4、5時間だ。この時間で業務フローをすっぱり変えてしまうということは、とても危険な試みだ。乗務員はJR東日本だけでおそらく30,000人以上いるだろう。全員が新しい業務フローを認識して、一つの間違いもなく動き出すためには、あまりに時間が足りない。
そのため、JR東日本では業務フローを大きく変えず、JR東日本のサイトにあるように「フローの中抜き」で、A区から直接乗務員に情報が送信されるように変更したのだ。 オルリー空港は、JR東日本のような変更を検討したのかどうかは定かではないが、20年以上変更しないままに利用していたということになる。しかし、ここに来てそれではまずい、ということになっているだろうから、じっくり検討した上で刷新されるものと推測される。