WatsonのAIはArtificial IntelligenceではなくAugmented Intelligence
「2020年までに、Watson関連の市場規模は1兆円を超えます。そしてWatsonは、ビジネス用のAIプラットフォームとしてはNo1の存在です」―冒頭からこう主張するのは、公の場に登場すること自体が珍しいIBM CEO ジニー・ロメッティ氏だ。
Watsonは医療分野の診断システムのアシスタントとして、すでに2億人の患者のために使われている。教育現場でもWatsonは利用されており、これも大きく拡大している。
「AIをビジネスとして行う際には、目標が大事です。IBMでは拡張知識(Augmented Intelligence)を大事にしています。そして、人と機械が一緒にやっていくことが重要です。一緒にやるためにも、知識の拡張が必要となるのです」(ロメッティ氏)
重要なのは、ユーザーが持っている知財、つまりはデータだ。これは他人のものではなく、自分たちのためのものだ。データが基本的な競争力を生み出す「素」になる。なので、誰にデータを渡すかはかなり慎重にならなければならない。そしてデータの蓄積は、知識の累積ということ。データがあれば、Watsonが知識に変える。知識が生まれれば、それを使ってビジネスを変革できるのだ。
もう1つ重要になるのがエコシステムだ。
「WatsonはIBMだけのものではありません。エコシステムがあったからWatsonは可能となりました。たくさんの大学や研究所があり、大勢の開発者がいたから実現できました」とロメッティ氏。1つ1つの組織は小さなものかもしれないが、Watsonを活用した結果は大きなものとなっている。Watsonのエコシステムには、社員が10人しかいない会社もあれば1万人規模の会社もある。世界中の開発者が、自分の仕事のうちの53%でがコグニティブの機能を組み込むことに取り組んでいる。
さらにWatsonを成功させるためには、エンタープライズレベルのクラウドも必要だと言う。IBMでは、クラウド上で誰もがWatsonの機能を使えるようにしている。そんなWatsonを活用するには、業界に特化することも鍵となる。業界特化型のWatsonとしては、すでに金融やヘルスケアの領域のものがある。