NEC 執行役員 橋谷直樹氏は「30年の歴史」から切り出した。NECは1987年にオラクルとOEM契約を締結。ここから両社の協業がスタートし、今年で30年になるという。この30年間、両社はミッションクリティカルシステムへの対応を継続的に行い、近年では内部犯行対策ソリューションやエンジニアドシステムに関する協業も発表している。
橋谷氏はNECのオラクル関連の対応システム案件数が年間3000件、オラクル技術者が4000名で「国内最大級」、Exadata累計出荷台数が200台は「国内最多」と述べた。
提携のポイントとして橋谷氏は次の4点を挙げた。NEC国内データセンターから「Oracle Cloud」提供、NECのソリューションと「Oracle Cloud」の連携拡大、「Oracle Cloud」対応人材強化、「Oracle Cloud」の一次保守の提供。橋谷氏は今回の協業は「クラウドでの新たな協業のファーストステップ」と述べ、今後も両社はクラウド事業で協業をさらに強めていく意向を示した。
協業の大きな柱はNEC国内データセンターからの「Oracle Cloud」提供だ。NEC国内データセンター内で「Oracle Cloud」が稼働することになる。これに伴い、NECが「Oracle Cloud」の一次保守も提供する。橋谷氏は「単なる(サービスの)再販ではない」と言う。NECによるインテグレーションや運用管理、NECが持つ約100種類のソリューションとの連携といった付加価値も含めて提供するという。
現状NEC国内データセンターにはNECが提供するIaaS、PaaS、SaaSがある。「Oracle Cloud」が加わることで、IaaSとPaaS部分はNECのものと「Oracle Cloud」が両立し、選択肢が増えることになる。
NECはグループ会社を含めてオラクル技術者を約4000人抱えており、これもNECの強みの1つ。今後3年間でNECは「Oracle Cloud」の運用管理、既存システムからの移行支援、ハイブリッド環境の導入や運用を支援できるエンジニアを1500人育成する。
クラウド提携により、NECとしては顧客にクラウドの選択肢を増やし、柔軟かつ最適なシステム構築ニーズに応えられるようにする。また今後のデジタルビジネス事業(SoEなど)の拡大も狙う。橋谷氏によると、新たに生み出す事業は2020年までの4年間で1500億円を見込んでいるという。これはプライベートクラウド、ハウジング、関連SI/サービスなどを含むクラウド関連事業となる。
オラクルはエンタープライズ領域の顧客にクラウドの提供と活用を促進し、ビジネストランスフォーメーションをサポートしていく。つまりOracle Databaseで基幹システムなどを運用している顧客にクラウドへの移行を促し、さらにクラウドを活用できるように両社が手を組んだという形だ。
日本オラクル 執行役 副社長 クラウド・テクノロジー事業統括 石積尚幸氏は「両社協業によりお客様のクラウドジャーニーを加速させます」と話した。この「クラウドジャーニー」の目的地はオラクルとしては「Oracle Cloud」だ。実際のところ、オンプレミスからパブリッククラウドへは一足飛びに移行するのは簡単ではない。多くのケースでは顧客環境でエンジニアドシステムの活用やプライベートクラウドを構築し、あるいはハイブリッド環境を構築してからとなる。この中間段階を協業により促進させるのが狙いだ。
オラクルからすると、NECが持つインテグレーションからサポートまでのカバー範囲と、日本全国に広がる幅広い顧客は魅力となる。地域ビジネスでクラウド利用が進めば、オラクルが目指す地方創生にもつながる。
今後について橋谷氏は「模索中」としながらも、「NEC the WISE IoT Platform」にてオラクル技術を導入することで連携強化することも考えているという。橋谷氏は「これまで続いた30年の協業の歴史を今後30年以上伸ばしていく」と協業をより強固にしていく構えを見せた。