マイクロソフトのサービスと3つのレベルで統合する
今回のAdobe Summitでは、エンタープライズ企業がコンテンツやデータ、インテリジェンスを既存のプロセスやデータシステムに容易に連携できるようにするための共通データ言語「Standard Data Model」を発表した。
これは、顧客との接点を持つさまざまなアプリケーションを利用する企業が、顧客体験を1つにするためのものだ。共通言語を使うことで顧客のプロファイルや行動などの情報を、アドビのクラウドと容易に連携できるようにする。このStandard Data Modelの開発には、Acxiom、AppDynamics、Dun&Bradstreet、Mastercard、Qualtrics、Zendesk、[24]7なども参画している。
そしてこのStandard Data Modelの開発をリードするもう1つの企業が、2016年9月にアドビとの提携を発表したマイクロソフトだ。アドビとマイクロソフトは、この業界標準データモデルの共同開発に加え、具体的な協業施策としてAdobe Experience CloudとMicrosoft Azure、Microsoft Dynamics 365、Microsoft Power BIを統合して、クロスチャネル体験やキャンペーン実行の仕組みを新たに提供開始する。
今回のタイミングでは、両社の3つのサービス統合を発表している。Adobe CampaignとMicrosoft Dynamics 365の統合では、Adobe Campaignのマーケティングでのタッチポイント情報と、Microsoft Dynamics 365のCRMの顧客情報を統一し顧客のシングルビューの構築が可能だ。これにより、マーケティングとCRMで一貫した顧客体験が提供できる。
Adobe AnalyticsとMicrosoft Power BIの統合では、双方のデータ分析の機能を1つにする。これによりたとえばPower BIにデジタルマーケティングで得られる顧客の行動データを入力することで、各セグメントにおけるキャンペーンの影響度を可視化し、最も有効な顧客タッチポイントを推測できる。またPowerBIで得られる結果を、Adobe Marketing Cloudにフィードバックし、すぐにマーケティングアクションに反映させることも可能となる。
もう1つの統合は、アドビのクラウドサービスをMicrosoft Azureの上で利用できるようにするものだ。まずはAdobe Experience Manager Sites Managed ServiceがMicrosoft Azureの上で利用できるようになる。将来的には、Microsoft Azureの上でアドビとマイクロソフトのサービスを活用した一貫した顧客体験のソリューションを構築できるようになるのだろう。
アドビのエグゼクティブバイスプレジデントでCTOのアベイ・パラスニス氏は、今回のマイクロソフトとの協業におけるサービスの統合には、3つのレベルがあると語る。
「1つめがインフラレベルでの統合で、アドビのクラウドサービスがMicrosoft Azureの上で動くものです。2つめがデータとデータモデルレベルでの統合で、これは共同開発する標準の共通言語でデータやデータモデルがシームレスに連携できるようになります。そして3つめが、ユーザーエクスペリエンスレベルの統合です。これはたとえば、Adobe AnalyticsをPowerBIの中に入れ、PowerBIのユーザーエクスペリエンスに統合しています」(パラスニス氏)
アドビとマイクロソフトでコネクターを提供するので、データとデータモデルの統合を行うような際にも、IT部門などがインテグレーションのためにコードを書くなどの手間は発生しないとのことだ。