今一つわかりにくいデジタル・ナレッジ・マネジメントビジネスだが、これを日本で展開すると7月に発表したのがYext(イエクスト)という会社だ。そしてYextの日本法人の代表取締役会長兼CEOに就任するのが、元セールスフォース・ドットコム社の代表取締役社長で米国Salesforce.comの上席副社長も勤めた宇陀栄次氏だと聞くと、デジタル・ナレッジ・マネジメントのビジネスに俄然興味が湧いてくる。
Webサイトを使った情報発信は終わり、Yextのデジタル・ナレッジ・マネジメントに
Yextは、オンライン上のあらゆる場所で表示される情報を一元的に管理し、最新に保つことを可能にするクラウドプラットフォーム「Yext Knowledge Engine」をベースにして、デジタル・ナレッジ・マネジメントのサービスを提供している。YextのKnowledge Engineは、検索エンジンなどのための新たなナレッジ管理をするものだと説明するのは、Yextの創業者でCEOのハワード・レーマン氏だ。
レーマン氏は、インターネット上の情報検索においてトレンドのシフトが起きていると指摘する。
これまではキーワードを入れて検索を行うと、合致する情報のリンクが多数表示されていた。とはいえ最近は、リンクではなくキーワードに関する情報そのものも表示される。たとえば、図のようにGoogleで「翔泳社」をキーワードに検索を行うと、左側には翔泳社のWebサイトやWikipediaなど翔泳社に関連するリンクが従来通り多数表示される。
一方右側部分には、翔泳社のビルの写真や住所、営業時間などの情報が直接表示されるのだ。
今では人物名で検索すれば、リンクだけでなく写真も含め一目でその人物が誰なのかが分かる情報を示してくれる。また、iPhoneのSiriを使って音声で質問をすれば、リンクではなく直接質問の答えを教えてくれるだろう。
「これはWebサイトを使った情報発信の終演を意味しているのかもしれません。Webサイトは、これまではユーザーのデジタル・エクスペリエンスでは1番のものでした。とはいえ、ユーザーはリンクが欲しいのではなく、一目で把握できる情報が欲しいのです。検索しているのはWebサイトを見たいわけではなく、探している情報がすぐに出てくることを求めているのです」(レーマン氏)
Yext Knowledge Engineでは、こういった新しい検索エンジンのためのナレッジを管理するものだ。Knowledge Engineには人、製品、店の情報などを入れることができる。その上で、SiriやGoogle Map、MicrosoftのCortanaなどさまざまなサービスと統合が可能だ。それにより、SiriやGoogleで検索を行った際に、正確で最新の情報を結果として表示するのだ。Yextのサービスは、160カ国80の言語で使用可能だ。
「一番近くのマクドナルドはどこ? と音声で問いかければ、Siriは音声を認識し地図を表示してくれます。これを実現するのがYextです。世界中の情報すべてを統合して提示するのがYextです」(レーマン氏)。すでにYextのサービスは、マクドナルドやマリオットホテル、グッチ、バーバリ、シティバンク、チェイス、モルガンスタンレーなど多くの顧客で使われている。
米国のデニーズには、拠点が1,700カ所ほどありYextを使ってオンライン情報の管理を行っている。Yextを利用する前の課題は、それぞれの拠点の情報が不正確で統一されていなかったことだ。Yextを使ったことで、情報の正確性と整合性を保つことができるようになった。
顧客がレストランなどに行く際は、たとえば車椅子が入れるか、グルテンフリーのメニューがあるか、今日のスペシャルメニューは何かといったことで店を判断する。人々は、事前にこれらの情報を知ろうとして検索をする。実際デニーズでは月平均で85万件の経路検索が行われ、問い合わせ電話も20万件かかってくる。
古いスペシャルメニューの情報がWeb上にあれば、それを求めて来た顧客は不満を持つだろう。間違った住所情報がどこかのレストラン情報サイトに登録されていれば、それを見た人は道に迷うかもしれない。実際オンラインの世界には、間違った情報や古い情報もたくさんある。Yextを使うことで、間違っていた情報を無くし正確な情報をタイムリーに提供できるようになるのだ。