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(第18回)  「サービスデザイン」と「リーンスタートアップ」によるビジネスのリ・デザイン

  2013/06/27 08:00

リーンスタートアップ+サービスデザインの利点-「木も見て、森も見る」

 小さく学びを積み重ねるリーンスタートアップのアプローチと、顧客経験という観点から複数のタッチポイントを統合する形を考えるサービスデザインの包括的アプローチは、一見したところでは両立しづらいもののように感じられます。

 しかし実際のデザインの現場では、2つのアプローチは両立可能で、むしろ両者を組み合わせることの利点のほうが多いように感じます。

 具体的には、両者を組み合わせることでの利点として、下記のようなものが考えられます。

  • 最終的には様々なタッチポイントを統合するようなサービスシステムを作るような場合でも、リーンスタートアップのMVP(minimum viable product)の観点から、サービスを小さな部分ごとに仮説検証しながら実現していくことで大きなリスクが回避できる。
  • また、複数の部分を同時並行的に開発することも可能となり、サービス化に向けたスピードアップも図れる。
  • サービスデザインのメタ的視点をもつことで、通常は小さな学びを重ねていくがゆえに特定のタッチポイントの最適化にも陥りがちなリーンスタートアップ型のプロジェクトに、さまざまな確度からビジネスの可能性を検討できる機会が与えられる。

 「小さな学びを重ねる」という点と「包括的な視点で個別のタッチポイントを超えたデザインを行う」という点だけ比較すると、組み合わせることが難しそうに思われる2つのアプローチです。しかし、そもそも両者とも根底には「User-Centeredなアプローチ」であるという点で、共通点のほうが多いとも言えます。

 バリデーションボードの“Get out of the building”などに代表されるリーンスタートアップの実際に顧客との接点をもって仮説を検証するという姿勢。そして、サービスデザインの参加型デザインやCo-designなどの方法。この両者は通じていますし、共にプロトタイピングを使った検証を行うという観点からも、相性がよいものなのです。

 ただ個別にみると、どうしても欠点が目立ってしまうように思うのです。たとえば、リーンスタートアップのアプローチでは、アジリティーを重視しすぎるがゆえについつい大きなビジョンを描くということをおろそかにしてしまったりします。逆にサービスデザインは包括的な視点での統合にこだわりすぎて、スピード感に欠けたり、あまり多くのアイデアが検討されることがないまま、デザインの方向性がきまじめすぎてしまったりすることがあります。

 こうした双方の欠点を補う意味でもリーンスタートアップ+サービスデザインというアプローチは有効です。

 具体的には、リーンスタートアップの考え方を取り入れながら、ビジネスを包括的な視点から見直していくというサービスデザインを行うというアプローチが、大きくビジネス環境が変化しているいまの時代に様々な組織には必要とされるものではないかと思います。実際、私自身が携わる仕事でもそうした性格のものが増えてきています。


著者プロフィール

  • 棚橋弘季(タナハシヒロキ)

    棚橋弘季(たなはしひろき) 株式会社ロフトワーク所属。イノベーションメーカー。デザイン思考やコ・デザイン、リーン・スタートアップなどの手法を用いてクライアント企業のイノベーション創出の支援を行う。ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」。著書に『デザイン思考の仕事術』 など。

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