シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は、伊那市役所が、既に導入済みの「Citrix Virtual Apps and Desktops」上で運用されている同市役所の仮想デスクトップ環境にリモートアクセスを可能にする「リモートアクセスソリューション」を新たに導入したことを発表した。本ソリューションを利用することで、同市は、セキュリティを強化し、導入・運用コストを最適化。新型コロナ感染拡大を受け急遽必要になったテレワーク環境を1ヵ月で構築したとしている。
伊那市では、ドローンとLTEを活用したデリバリーサービスの展開やAI(人工知能)を活用したタクシーの自動配車サービス、デジタル聴診器や通信端末を活用した遠隔診療を行うモバイルクリニック、自動運転のトラクターや田植え機による農作業の実証など、最先端の技術を導入した社会課題の解決に取り組んでいるという。
2008年から庁内で職員1人1台の割合でシンクライアント端末を配布し、2015年の自治体強靭化政策への対応ではマイナンバー系・LGWAN系・インターネット系の三層分離を行っている。その後、クライアントの環境を「Citrix Virtual Apps and Desktops」をベースにした仮想デスクトップ環境へと切り替えたとしている。
企画部 情報統計課 課長の中山勇八氏は「シトリックスのリモートアクセスソリューションを採用した理由は、『Citrix Virtual Apps and Desktops』をすでに導入していた当市にとって、このソリューションが職員のテレワークを最も効率的かつ迅速に実現する方法だったからです。人々の暮らしに直結する自治体の業務は有事のときにこそ、職員の安全を確保しながら、自治体をしっかりと機能させなければなりません。テレワークはそのための有効な手段として、できる限り早期に実施可能にすることが重要でした」と述べている。
導入効果
- 強固なセキュリティと適切な費用:インターネットから直接暗号化通信する(SSL/TLS-VPN)だけではセキュリティは不十分で、閉域の専用線の使用では通信費がかかりすぎるという課題に直面。この課題を解決するために、シトリックスのリモートアクセスゲートウェイ、Citrix ADCを採用し、ゲートウェイへのアクセスと仮想デスクトップのログインでの二段階認証を行い、それぞれの認証ではワンタイムパスワードが必要な認証を導入した。また、リモートログインするユーザーは、管理側からの事前許可を必要としている
- ユーザーエクスペリエンスを確保:テレワークを実施した職員は、システム上のパフォーマンスで障害を受けることなく、市役所庁内、総合庁舎、出先機関などで庁内システムにアクセスしている時同様のユーザーエクスペリエンスで、通常通りの業務ができるようになったという
- BYOD(私的情報端末の業務活用)の導入で運用コストを削減:市側が端末を準備し、テレワークを行う職員に端末を貸与する場合、端末レンタル料や通信費などで、年額で約5~6万円/台掛かると言われており、伊那市のように50ライセンスを準備した場合、年額250万円~300万円掛かる計算になるとしている。BYOD方式により、後年度のコストを実質“ゼロ”にできたことは、コロナ終息後もリモートアクセス環境を積極的に活用し職員の働き方改革に活かす計画をする上で、中長期的にもTotal Cost of Ownership(総保有コスト)の大幅な低減になる
中山氏は、「テレワークはBCP対策としてだけでなく、テレワークが実現する働き方の変革により、自治体の職員にとっても、地域住民の方々にとっても、より効率的で快適な働く環境とサービスの提供につながる可能性があります。伊那市では、今回構築したリモートアクセス環境を自宅のみならず、屋外でも利用できるようにし、住民相談や訪問介護など、現場に出向く機会の多い職員の働き方改革にも役立てていきたいと考えています」とコメントしている。
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