2024年10月4日、パロアルトネットワークスは年次イベント「Ignite 24 Japan」開催にともない、“AIセキュリティ”戦略に係る記者説明会を開催した。
同社では、セキュリティ製品へとAIの組み込みを進めているとして、パロアルトネットワークス Business Principal, Platform事業部 和田一寿氏は、「もはや従業員がAIを使い、ビジネスのトップラインを伸ばしていくことは当然の状況だ。一方、過渡期とも言える環境下で“グレーの状態”のまま利用してしまい、『シャドーAI』『機密情報漏洩』『悪性コンテンツ』などのセキュリティリスクも増えている」と指摘。そこで同社は、「AI Access Security」という機能を提供しているという。
AI Access Securityでは、600以上の生成AIを(60以上のアトリビュートを含めて)カタログ化し、「認可・グレー・非認可」の3つに分類することで、SASEのコンポーネントから可視化・制御するものだ。たとえば、従業員がどのような文脈で生成AIを利用しているのか、DLPカテゴリを適用しながら機密データの流出を阻止したり、Prisma Access Browserと連携して従業員に通知(コーチング)を送ったりするという。最終的には、継続的にリスク管理ができているか、利用状況やリスク、コンプライアンスなどの観点から統合レポートを生成。Copilotによる提案も行ってくれるとのことだ。和田氏は、「毎週3つの新しい生成AIを発見しているが、ほとんど『非認可』と分別するケースが多い」とも説明する。
また、AIアプリケーションを自社で構築する際のAI管理において、「AI Security Posture Management(AI-SPM)」を提供しており、どのような教師データを利用しているのか、機密データの有無を可視化した上で、一般公開されていればアラートをあげるような対策も可能だという。
たとえば、シャドーAIのようなリスクに対しては、自社利用しているAI資産をリスト化した上で、PCIやPIIなどの機密データが含まれないかを確認。どのようなライブラリやOSSを組み込んでいるのか、ソフトウェアサプライチェーンの脆弱性を分析しながら、プロンプトの入出力などをモニタリングすることにより「データポイズニング」がないかなどをリアルタイムで検知・対応できる。パロアルトネットワークス Cloud Engagement Director 伊藤悠紀夫氏は、「これらの機能は、特別なソフトウェアやプラグインなしで、マルチクラウド環境でも適用可能だ」と強調した。
さらに「Securing AI by Design AI-Runtime」機能では、15種類のプロンプトインジェクションに対応したり、DOS攻撃に対応可能。AIモデルだけでなく、データやアプリケーションといった観点からも保護機能を強化しており、Strata ネットワークセキュリティプラットフォームで提供を行っている。
加えて、同社がすべてのプラットフォームに組み込んでいるのが「Precision AI」だ。たとえば、Strataでは大きく4つのコンポーネントに搭載されており、AIにより増加しているゼロデイ攻撃を防ぐため、Advanced WildFireエンジンを利用したサンドボックスベースのマルウェア解析を実施可能だという。「ネットワークコンポーネントに散りばめられており、230万の新規もしくはユニークなゼロデイを含む攻撃を特定し、113億もの攻撃をインラインでブロックしている」と和田氏は自信を見せる。
こうした機能追加とあわせて、インシデント対応にともなうSOC内製化が必要だと認識している企業が増えている状況を鑑みて、「XSIAM」という自動化ソリューションも提供するという。Copilotによる運用サポートにより、専門知識がなくともプレイブックの作成、インシデント対応を可能にしていくとのことだ。パロアルトネットワークス ソリューション技術本部 Cortex技術部 部長 室井俊彦氏は、「すべてのプラットフォームでCopilotを利用でき、早期の対処・対応が可能だ」と話す。たとえば、自然言語で「トップリスクは何か」と尋ねると結果を表示した上で、グラフに関する詳細情報、インシデント対応に必要なアクションを提示するという。
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