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キンドリル、ITモダナイゼーションの課題調査の結果を発表:自己評価と現実のギャップと日本の対応の遅れ

「Kyndryl Readiness Report 2024」調査レポート

 2025年3月13日、キンドリルは「Kyndryl Readiness Report 2024」の日本版を発表し、キンドリル Core Enterprise&zCloud部門担当グローバルプラクティスリーダーのペトラ・グーダ氏が会見を行った。世界17カ国・25業界の経営幹部3,200名を対象に実施された調査結果をもとに、企業のITインフラに対する自己評価と実際の準備状況の間に存在する大きな隔たりについて解説した。

キンドリル Core Enterprise&zCloud部門担当グローバルプラクティスリーダー トラ・グーダ氏
キンドリル Core Enterprise&zCloud部門担当グローバルプラクティスリーダー ペトラ・グーダ氏

 グーダ氏は現代のITリーダーが直面している5つの循環的なトレンドを指摘した。第1に、AIを効率的に活用するためのデータ戦略の重要性がある。第2に、オンプレミスに残すべきものとクラウドに移行すべきものの選択という、クラウド移行におけるバランスの取り方の課題がある。第3に、フロントエンドアプリケーションの移行は進んでいるものの、日本を含む世界経済を支える重要なコアシステムのモダナイゼーションが依然として課題となっている。第4に、デジタル化の進展に伴い犯罪者もデジタルに適応しているため、サイバーセキュリティへの懸念が高まっている。最後に、これらすべてのトレンドに対応するための技術的スキルが世界的に不足しており、多くの企業にとって重大な課題となっている。

 特に、これらのトレンドの中心には日本社会にとって重要なメインフレームのモダナイゼーションがあると、グーダ氏は強調している。

 キンドリルの調査で明らかになった重要なことは、自己評価と準備状況の乖離だ。調査対象となった3,000社のうち90%がインフラのベストプラクティスが必要だと認識しながらも、将来に向けて準備が整っていると答えたのはわずか39%に留まっているという現実だ。

(出典) キンドリル [画像クリックで拡大]

 「これはパラドックスとも言えます。多くの企業が優れたインフラが必要だと認識しながら、実際の準備はできていないのです」とグーダ氏は指摘した。

 さらに、94%のビジネスリーダーがモダナイゼーションを成功の重要な要因だと考えているにもかかわらず、実際に準備ができていると答えたのは29%にすぎない。このギャップは、企業の自己認識と実際の準備状況の間に大きな隔たりがあることを示唆している。

 キンドリルが収集したデータによれば、顧客企業のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器の44%がすでにエンドオブライフを迎えつつあるという現実も、もう1つのリスク要因となっている。この状況は多くの企業がインフラ更新に十分な投資を行えていないことを如実に表している。

日本企業のITモダナイゼーションの課題

 またこの調査では、日本企業はITモダナイゼーションにおいて深刻な課題を抱えていることが明らかになった。特にデータセンターとAI分野での準備が遅れており、将来的なリスク管理においてITインフラへの備えが整っていると回答した日本のリーダーはわずか27%にとどまる(グローバル平均は39%)。

(出典) キンドリル [画像クリックで拡大]

 また、老朽化したITシステムへの懸念も顕著で、日本企業の約半数(51%)がITシステムの時代遅れやサポート終了間近の問題を抱えている。Kyndryl Bridgeによるデータでは、日本企業のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器の38%がサポート終了間近かサポート終了となっている状況だ。

(出典) キンドリル [画像クリックで拡大]

 日本企業の特徴として、経営層とIT部門の対立も浮き彫りになっており、経営層の75%が意思決定に同意すると回答している。また、サステナビリティ優先順位の低さも課題であり、モダナイゼーションによるESG目標達成の取り組みが他国より遅れている。

 AI投資についても、生成AIと従来型AI両方に投資しているものの、ROIが低いという課題がある。その主な障壁はデータプライバシー、セキュリティ、ROIの不確実性だ。

(出典) キンドリル [画像クリックで拡大]
(出典) キンドリル [画像クリックで拡大]

 グーダ氏はメインフレームのサポート戦略として「ライトワークロード、ライトプラットフォーム」のアプローチを掲げ、3つのモダナイゼーションパターンを紹介した。

 第1は「プラットフォームのモダナイゼーション」であり、既存のプラットフォームやデータをハイパースケーラーや分散環境と統合するアプローチだ。事例として、日本の保険会社が富士通のメインフレームからIBM Zに移行し、将来的なレジリエンス向上とコスト削減を実現した例を挙げた。

 第2は「データの統合」である。イタリアの事例では、データをオラクルに移行しつつトランザクション処理はメインフレーム上で維持するという分離戦略を採用した。この結果、プラットフォー ムコストの大幅削減と、クラウド上のAIモデルによるデータ活用の両立を実現した。

 第3は「アプリケーションの移行」であり、メインフレーム上のアプリケーションを別プラットフォームに移行するアプローチだ。メキシコの保険会社や日本の製鉄会社の事例では、移行リスクの抑制とオペレーションの安定性維持に成功している。

 最後にグーダ氏はキンドリルの強みとして、メインフレーム関連事業が全体の1/3を占める重要ビジネスであること、世界7,000社・日本600社のメインフレームユーザーをサポートする豊富な経験と専門知識を有することを表明した。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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