マルチクラウド、Fintech推進に向け「ITガバナンスの再構築」と「バイモーダルな企画開発体制」を整備する―ジャパンネット銀行CIO 出口剛也氏

日本初のインターネット専業銀行であるジャパンネット銀行は、コンビニ決済やEC決済提携によるフロービジネスでサービスを拡大している。同社が銀行でありながらリアル店舗を持たず、顧客本位な商品サービスを提供し続けるためには、通常の銀行とは異なるITインフラ戦略が不可欠だったという。EnterpriseZine編集部の主催セミナー「変化に強いITインフラとシステム運用の条件」の基調講演に登壇したジャパンネット銀行のCIOである出口剛也氏が、マルチクラウド利用やFintech推進において、マネジメント層が意識しておく事項も交えながら、銀行ビジネスを支える同社のITインフラ整備とIT部門の組織運営の取り組みを解説した。
Fintech企業との協業を積極的に進めるジャパンネット銀行
株式会社ジャパンネット銀行 執行役員 IT本部長(CIO) 出口剛也氏は、「銀行ビジネスを支えるIT組織とITインフラのベストミックス」と題した講演で、同社が近年進めるFintechへの取り組み、マルチクラウド戦略、そしてそれらを裏で支えるITインフラと組織体制について紹介を行った。

2000年に国内初のネット専業銀行として創業したジャパンネット銀行は、創業18年目を数える2018年2月に、かねてからの主要株主であったヤフー株式会社の連結子会社となった。この経営戦略の背景について出口氏は次のように説明する。
「デジタライゼーション実現のためには、AIやビッグデータの基礎を成す“データ”の獲得と活用、すなわち『データ資本経営』が鍵を握る。その実現のために、顧客接点に関する豊富なデータを有するヤフーと手を組むことで、第二の創業として新たなチャレンジに乗り出すことになった」
そんな同社が現在積極的に取り組んでいるのが、Fintech企業との提携によるオープンイノベーションの促進だ。近年、先進的なIT技術を武器に、従来の金融機関には不可能だった「より顧客に身近で使いやすい金融サービス」を提供するFintech企業が台頭してきた。海外では既に多くのFintechサービスが広くユーザーに受け入れられているが、日本国内の金融業界では新興企業の参入障壁が高く、Fintech企業が単独で市場を形成するのは簡単ではない。
そこで、これまでレガシー金融を長年担ってきた銀行と、先進的な技術とビジネスアイデアを持つFintech企業とが、互いにオープンイノベーションマインドを持って連携することで、新たな金融サービスを生みだすことが期待されている。ジャパンネット銀行でも、既に数多くのFintech企業との協業を通じてさまざまなサービスを実現している。
「ジャパンネット銀行が公開しているAPIを、先進的な技術と多くの会員を持つFintech企業が使うことで、斬新なサービスを実現している。既に家計簿ソフトや会計ソフトのクラウドサービスベンダーや決済・送金関連企業との協業の実績がある」(出口氏)
例えば、クラウド会計ソフトを提供する「freee社(以降、freee)」との連携では、freeeの会員ユーザーの収支データやキャッシュフローデータを取得し、その内容を基にビジネスローンの審査を行うサービスが実現している。またヤフーとの協業の一環として、Yahoo!ショッピングやヤフオク!に出店しているEC業者の売上データや顧客評価データなどを取得し、それを基にビジネスローンの審査などを行うサービスも提供している。担保の提供や来店は一切不要で、最短では当日中に審査結果が回答できるという。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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