急成長するアリババグループをインフラで支えるアリババクラウド
アリババクラウドが本格的に日本企業に向けてアプローチを開始してきた。今や中国はアメリカに並ぶ消費大国となり、巨大市場へと成長した。またデジタル化が急速に進んでいる市場でもある。日本から進出しようとすると、国内や欧米諸国とは法律やインフラ事情が異なり、ハードルが高い。そこにアリババクラウドが手を差し伸べてきている。
アリババクラウドはその名の通り、アリババグループのクラウドコンピューティングを担っている。急成長するアリババグループをインフラで下支えしながら力を蓄えてきた。今やグローバルIaaS市場ではAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azureに続き、3位へと躍進したクラウドベンダーだ。
アリババクラウドの強みとして象徴的なのがオンラインショッピングの日となる「独身の日」の耐久力。購買者だけではなく攻撃者からの猛烈なアクセスが集中するなか、一度も止めることなくアリババグループのサイトを稼働し続けてきた実績がある。また中国では購買前に店員に相談することが多いらしく、独身の日には4000万人もの問い合わせをAIボットも活用したチャットで解決している。規模がどれも半端ない。
アリババクラウドは設立が2009年、パブリックサービス開始が2011年。Microsoft Azureは発表が2008年でサービス開始が2010年、GCP(Google Cloud Platform)はGoogle App Engineのサービス開始が2008年なので、アリババクラウドとAzureとGCPはスタート地点で見るとおおよそ近い。ただしアリババクラウドが日本に門戸を開いたのは2016年12月から。ソフトバンクとアリババグループの合弁会社となるSBクラウドがアリババクラウドをパッケージ化して提供したのが始まりとなる。
日本から見ると、少し前までアリババクラウドは中国向けの特殊なクラウドベンダーだったのではないだろうか。「(中国の)ローカルクラウド」と呼ぶ人もいたという。例えば中国に現地法人を設立したから日本と中国間でシステムを接続するためのインフラがほしいなど、中国に特化したクラウドサービスプロバイダーというイメージがあった。
もうこうしたイメージは払拭したほうがいいだろう。アリババクラウドのネットワークは中国や香港で充実しているのはもちろんのこと、2015年ごろからシンガポールやマレーシアなどのアジアへと、続けて欧米にも着実に手を広げてきている。日本リージョンは2016年にリリースし、今では2つのアベイラビリティゾーンが稼働している。提供しているサービスも急速に広げており、AzureとともにAWSを猛追している。