クラウド時代、ユーザのデータへの責任はより大きくなる
冒頭で申し上げた通り、今回ご紹介したのは、クラウドの事例ではありません。にもかかわらず、なぜこの事例を紹介したのか? それは、「データ移行に伴うユーザの責任」という部分に注目していただきたかったからです。
クラウド案件に関する判例はまだそんなにたくさん出てきていないのが現状です。ですので、今後新たな紛争が起きたとき、過去の類似のケースが参考にされることにもなるでしょう。そういった意味でこの事例は今後起こり得るクラウドのトラブルのひとつである、「データ移行に伴うユーザの責任」について、多くの学びがある事例と言えるでしょう。
既存システムからクラウドに切り替える際、自ら望む機能や性能をクラウド上で実現できるかということに関心を寄せるユーザは多いと思います。クラウド上で新しい業務を円滑に行うには、正しいデータを扱うことが必須です。そして、データを本当の意味で正しく登録できる("既存データを正確に"ではなく"新しいクラウド上でも業務が円滑に行えるように")のは、ユーザだけです。ということは、ユーザは日ごろから、自分達が扱っているデータについてよく知っておく必要があるということです。データベースに登録されているデータの名称、意味、相互の関連、文字コードや表現のゆらぎ等々、学ぶことは少なくありません。これまでも、ユーザにはデータ移行の責任はありました。さらに、オンプレからクラウドへ、また、クラウドからクラウドへシステムを移行することが珍しくなくなるこの時代においては、より一層、ユーザ自身も、現行システムのER等のデータ関連図やデータ定義について理解しておくことが必要になるということです。
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細川義洋(ホソカワヨシヒロ)
ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...
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