9割の企業がリモートワーク移行を評価
Salesforce Venturesは、世界260社以上のSaaS企業に投資を行うセールスフォースの戦略投資部門である。2020年4月にManaging DirectorのMatt Garratt氏は自身のブログで投資先を対象に実施した調査結果をレポート『Enterprise Technology Response to COVID-19 Survey』として発表した。
調査は投資先の一つでオンラインアンケートツールを提供するSurveyMonkeyの仕組みを使って行われた。回答を得られた66件はいずれもSalesforce Venturesが投資している企業のCEOであり、全体の3分の2が米国、残りを欧州、カナダ、APACが占めるという。企業プロファイルとしては、アーリーステージの成長中の企業が中心である。
約8割がシリーズC以下の企業であり、従業員数で見ても8割が250人以下の規模である。また、主なビジネスターゲットも9割弱が中堅・中小企業である(図1)。さらに、41名のCEOからの追加回答もレポートに反映されている。
この調査では「従業員」「顧客」「ビジネス」「地域社会」の4つの分野に着目している。まず、従業員のためにどんな施策を取り組んでいるかから見ていく。2020年3月から4月にかけて、スタートアップに限らず、世界中のあらゆる企業が最優先で取り組まなくてはならなかったのが、従業員の身体的な健康と精神的な健康をサポートすることであろう。結果からは多くの企業が、福利厚生の充実を含め、従業員がこのストレスの多い時期を乗り切るために必要なものを従業員に提供しているとわかった。
最もわかりやすい例がリモートワークである。日本でも多くの企業で急速に対応を進めたが、同調査では、95%の企業が完全にリモートワークに移行しているとわかった。リモートワークに移行後の業務効率に関しても9割弱が良いと捉えている。この高い評価の背景には、時間的に柔軟な働き方ができるようにするための社内規程の整備だけではなく、オンライン会議中に子供やペットが画面に出てこないような指導やホームオフィス用の備品の提供や追加手当のような施策を実施していることがある。
CEOにとってのチャレンジは従業員の働く環境を整備することだけではない。不確実性の高い困難な時期でも、従業員とのコミュニケーションを通してチームの士気を維持することや雇用の維持が求められた。各企業のトップは従業員と頻繁にコミュニケーションをとっている。回答者の8割弱が、少なくとも週に1回は全社会議を開き、チームの最新情報を伝えている。そしてチャットアプリを利用して日次のコミュニケーションを取り、従業員同士がつながりを感じられるように工夫を凝らしていることもわかった(図2)。