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HPEのテクノロジーで「洞察の時代」を切り開く

HPE Discover Virtual Experienceレポート

 エッジからクラウドのプラットフォーム技術をサービスとして提供するという目標を掲げるHewlett Packard Enterprise(以下、HPE)が6月、オンラインイベント「HPE Discover Virtual Experience」を開催した。新型コロナウイルス感染症がデジタルトランスフォーメーションを加速する中、HPEはどのように顧客を支援するのか? 中堅・中小企業向けのオンラインイベントのセッションも含めてレポートする。

新型コロナがDXを加速ーー「洞察の時代」に備えよ

 Discoverは、HPEが年に一度開催するフラッグシップイベントだ。パートナーや顧客を前にHPE幹部がビジョンを語り最新の技術を披露する場となっており、例年ラスベガスで開かれる。今年は新型コロナ感染拡大を配慮してオンラインに場を移した。用意された150点以上のコンテンツは日本語を含む10言語に翻訳され、約3万人が視聴した。

 新型コロナがビジネスと人々の生活に大きな影響を与えている。ITは、テレワークやビデオ会議などのインフラとしてその重要性が再確認された。HPEのCEO、Antonio Neri氏自身もDiscoverの前週に新型コロナ検査結果が陽性だったことを明かしたばかり。カリフォルニア州にある自宅から行った基調講演でNeri氏は、「幸い症状は軽く、改善に向かっているが、この感染症がいかに深刻なのかを身を以て体感した」と報告した。

Antonio Neri氏
Antonio Neri氏

 1時間弱におよぶNeri氏の基調講演のポイントは3つ。

  1. 新型コロナからの回復
  2. 新しいDXの波~「洞察の時代」
  3. 新製品発表(「HPE Ezmeral」と「HPE GreenLake」クラウドサービス」)

 1.の新型コロナについては、「前例のない時代になった。技術的なものだけでなく、生活という点でも新しい挑戦をもたらしている」とNeri氏。HPEは学校や病院など新型コロナへの対応に追われる機関にArubaのネットワーク技術、高性能コンピューティングなどの支援を行ったほか、社内では、“グローバルな意思決定とローカルでのアクション”をキーワードに、迅速に社員の安全確保、パートナーと顧客のサポートを続けている。

 HPEは2017年にエンタープライズの将来として「エッジ中心」「クラウド対応」「データ主導」と3つのキーワードを提示したが、新型コロナはこれをいきなり現実にした、とNeri氏。HPEの目的は人々の生活と仕事を強化支援することであり「今回のような難しい挑戦を解決することこそ、我々が存在する理由だ」と続けた。具体的には、テクノロジー、人、財務の3つの面から、トランスフォーメーションを支援するという。

 2.の「洞察の時代」とは、急速にデジタル化が進んだ結果、訪れつつある次の波だ。Neri氏は、「接続されていないデータがたくさんある。(新型コロナでも)研究者らはデータ量に圧倒されるだけで、情報から洞察を得てアクションを起こすことができない」と現状を指摘、「データを生成して収集することにフォーカスした情報の時代は終わりを迎えつつある。次の10年は洞察と発見の時代。データから得られた洞察を共有し、人間のために活用する」として、洞察の時代の到来を告げた。

 洞察の時代で必要になるのは、HPEが提唱してきた「エッジからクラウドのプラットフォーム」だ。これを土台にすべてのデータが接続、保護、分析され、アクションをとるが、実現には、「オープンソースのクラウドネイティブ技術上でアプリケーションを構築し、高度に分散されたインフラモデル上で最適化されなければならない」とNeri氏はいう。

 「洞察の時代を現実のものにするには、ワークロードをデータの近くに置くこと」(Neri氏)。これにより、制限なくデータとサービスを動かすことができ、アプリケーションに敏捷性が得られ、さらなる可能性が広がるという。

 一方で、Neri氏は70%のアプリケーションが現在もオンプレミス上にあるという事実も指摘する。企業はクラウドとオンプレミスの2つを平行して運用しなければならず、そのコストと手間が大きな負担になっている。「次のDXの波では、クラウドファースト(cloud first)からクラウドエブリウェア(cloud everywhere)にシフトする」とNeri氏は述べ、そのためのアーキテクチャ構築を呼びかけた。

 3.の新製品は、洞察の時代に向けたHPEの技術となる。HPEはサーバーやストレージなどのハードウェア製品に加え、ここ数年でアズ・ア・サービスブランド「HPE GreenLake」、ITコンサルティングサービス「HPE Pointnext」などを揃えてきた。

 これらに加わる形で、今年のDiscoverでHPEは新しいソフトウェアブランド「HPE Ezmeral」を打ち出した。買収したBlueDataのコンテナ技術、MapR Technologiesのビックデータ技術などをベースに、コンテナプラットフォームの「HPE Ezmeral Container Platform」)、機械学習(ML)オペレーション「HPE Ezmeral ML Ops」やアナリティクスとデータオペレーション「HPE Ezmeral Data Fabric」などを揃える。

 「多くの企業がAIや機械学習に投資しているが、機械学習(ML)モデルのオペレーションで成熟したプロセスを持つ企業は6%に止まる」とNeri氏。ML Opsにより、「データサイエンスチームはMLパイプライン向けにコンテナ化した環境を瞬時にスピンアップしてスケールできる。必要なデータに安全にアクセスできるため、洞察を得るまでの時間を月単位から分単位に短縮できる」とした。

 HPE GreenLakeブランドでは、コンテナ、仮想マシンなどをサービスとして従量課金で利用できるCloud Servicesを発表した。

 Neri氏は2018年のDiscoverでは4年で40億ドルを投じてエッジ分野を強化すると発表、2019年のDiscoverでは、2022年までにすべての製品をアズ・ア・サービスで提供すると宣言した。

 今年のGreenLakeプラットフォームの拡充とEzmeralの発表はこの延長線にあり、「HPEはDXの次の波を推進する。コロナ後の“新しい日常”の中で、人々がつながり、データを保護して分析し、さらに行動するために必要な技術とサービスを提供していく」とNeri氏は約束した。

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事業継続性、接続性、資金の3つで中堅・中小企業を支援

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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