パブリッククラウドをコピー&ペーストで顧客の許へ
当初OracleはSaaSには積極的だったが、IaaSやPaaSなどのインフラ系サービスにはあまり興味がなかった。CTOのラリー・エリソン氏は、SaaSを活用する企業が一緒にIaaSやPasSも使いたいと言うので「仕方がないからそれらも提供する」くらいのトーンで発言していたほどだ。一方でこのプライベート型の@Customerは、むしろエンタープライズ向けの「Oracleらしい」サービスであり、企業ニーズにマッチすると主張してきた。
それが大きく変化するきっかけは、「Oracle Autonomous Database」の登場した2018年だろう。これはGen2と呼ぶ次世代型クラウドインフラと最新のOracle Databaseを組み合わせ実現されている。Gen2クラウドインフラは、それまでのクラウドの弱点を克復しエンタープライズ向けに設計し直したものとなる。このGen2の提供以降、インフラ系パブリッククラウドにも拘りを見せ、エリソン氏はことあるごとにAWSに対する優位性を口にするようになる。
ところでAutonomous Databaseは、当初、Gen2クラウドインフラが動くパブリッククラウドからしか提供されていなかった。今回Oracleでは、Autonomous Databaseを顧客のデータセンターで利用できるようにする、2つのサービスを提供する。1つが「Oracle Exadata Cloud@Customer」だ。Exadata Cloud@Customer自体は、2019年のOracle OpenWorld時点でGen2インフラに対応していた。それを更新し、今回からAutonomous Databaseにも対応させたのだ。
もう1つが、Oracle Dedication Region Cloud@Customerだ。こちらはExadataだけではなく、パブリッククラウドのOracle Cloudの仕組みを「顧客のデータセンターにコピー&ペーストしたものだ」とエリソン氏は言う。Autonomous Databaseはもちろん、Oracle ERP CloudなどのSaaSなどを含む50以上のOracle Cloudのサービスが、これを使って顧客のデータセンターで利用できるようになる。対してAWSのオンプレミス版のサービス「AWS Outposts」では「使えるサービスは4つしかない」と、その差が大きさをエリソン氏は主張する。
Dedication Region Cloud@Customerには、Oracle Cloudのパブリッククラウドと同等のSLAも提供される。ベアメタルのサービスもHPCのサービスも、Oracle Cloudにあるサービスであればこの基本的に利用できるサービスとなっているのだ。