外資系企業と比べて遅れている日本企業のITガバナンス
本記事は2020年8月に取材した特別コンテンツの転載記事です
押久保剛(以下、押久保):最初にこれまでの高野さんのキャリアですが、デル、コーチ・ジャパン、ベネッセを経て、現在は資生堂様で執行役員CITO(Chief Information Technology Officer)を担われていらっしゃいます。現在の役割についてまず教えてください。
高野篤典氏(以下、高野氏):社内の情報システムの重要案件対応、管理強化を通じたITガバナンスの再構築が大きいですね。特に資生堂はアジアを代表する化粧品メーカーでグローバルプレーヤーのトップ3を目指しているので、海外法人のシステムも含めて管理する対象は膨大です。今までは現地での事業拡大に向け日本はもちろん海外法人もシステムの導入などは各社の裁量ですすめていることも多く、効果的で効率的な運用ができていない箇所も多々ありました。これを今まとめあげようとしています。
押久保:それぞれが違うシステムを使うことで非効率化も懸念されます。
高野氏:はい。日本企業は特にITガバナンスが外資企業と比べて遅れています。このことで生産性の低下を招いていることもある。ITガバナンスの再構築も私の重要なミッションです。
押久保:なぜ遅れているのでしょうか?
高野氏:グローバルの視点で見ると、言葉の壁があるでしょう。傘下の諸外国の現地法人に対して、本社が推奨する標準的なシステムを導入するには交渉力が求められます。また、これまでのIT部門はコストがベンチマークになることがほとんどでしたから、導入しているシステムがコスト面の課題をクリアしていれば、問題がないといえばなかった。しかし、今は事業を推進するために、IT部門としてどのような提案ができるのか? 本質的な問いかけを自らしていく時代です。
押久保:成塚さんとはどのようなきっかけで知り合われたのですか?
成塚歩氏(以下、成塚氏):私が前職の日本マイクロソフト時代にお客様だったのが高野さんで、当時はベネッセホールディングスにいらっしゃいました。初めてお会いしたのが2019年でしたよね?
高野氏:そうですね。資生堂に入社した際にOffice 365(当時の名称、現在はMicrosoft 365)ライセンス契約の見直しで相談に乗っていただきました。成塚さんが日本マイクロソフトを退職された後もSNSなどを通じてコミュニケーションを取り合っていました。成塚さんは非常に明確でアクションが早い方で、お会いした時から強く印象に残っていました。