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時代が求める攻守一体のIT部門 外資から転身し経営目線も有する資生堂CITOから見た課題と解決策

  2020/11/30 11:00

「予算」と「実績」の管理とチャージバックが大きな課題

成塚氏:予算や実績管理の話が出ましたが、私も長らく企業におけるITに携わる中で、課題が大きく2つあると考えていました。その1つが予算と実績の管理、つまり予実管理です。もう1つは費用を部門や部署別に直課したり配賦したりするチャージバック(ITコスト配賦)の煩雑さではないかと思っています。

高野氏:予実の管理は資生堂のような規模感だと、負荷は高いですね。これまでガートナーやIDCなどのデータを元に、競合他社との比較などもしてきました。同じように入札時にサービス価格の比較もできますね。ただ、問題はその情報は一時的な情報でしかないということ。機能面でも、費用面でも、今この瞬間の情報だけで、将来的な動きを見据えてシミュレーションをするとなると難しい。それに、この一時的な情報を得るだけでも時間と工数が相応にかかります。

成塚氏:グローバルになるとますますその業務は増えますよね。

高野氏:グローバルで標準的な動きをしようとしたときに、標準的なツールを入れてそれに従ってもらうのが一番いい。ルールを決めて、ルール通りに海外でも運用してもらえれば、出てくる情報もグローバルで同じ粒度になる。今、それをExcelで頑張っているわけですが、成塚さんのApptioなら担当者の工数削減と情報の標準化を期待できるのでは? と思っています。

成塚氏:Apptioなら、いったん設定してしまえば、リアルタイムで管理できます。ITサービスはいろいろな層から成り立っていますから、本来は企業全体でどのような働きをしているのか俯瞰的に見る必要がありますよね。ただ、そのツールがこれまではExcel中心でした。便利ですが、足りない面もある。例えばリアルタイム性だったり、データをレイヤーで分けて見られる立体性だったり。Apptioにはそれがあります。

ATUMは、Apptio TBM Unified Modelの略。
ATUMは、Apptio TBM Unified Modelの略。こうした整理でITコストの可視化が可能
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サービス利用状況の画面。請求額や前期との差異などがわかる
サービス利用状況の画面。請求額や前期との差異などがわかる
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ATUMは、Apptio TBM Unified Modelの略。
アプリケーションの運用費、開発費、支出の割合、利用数などが把握できる
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高野氏:成塚さんの2つ目の課題であるチャージバックについては、どのように振り分けるかは常に頭を悩ませてきた問題です。ただ、IT部門はコストセンターだけではありません。経営の戦略があり、その戦略を実現するために事業部門とIT部門が一体となって動くことが大切。そのためにも、利用する部門が自分たちでITサービスを買っていることを理解し、そこに費用が発生していることを見ることが大切。ITはタダではない。部門自らが投資をし、どのように回収していくかを考えてもらうことで、ITがより生きてくるのではないでしょうか。

成塚氏:今までIT投資はいくらかかっているのかを統合して見ていくことが難しかったですよね。Apptioのように担当者、部門長、IT部門側、経営層など担当によって可視化できる情報の種類を分けられたりもできなかったですし。部門側でもうまく使えている、使えていないがリアルタイムで分かれば改善意識も高まります。

高野氏:私の経験上、どうしても日本企業と外資系企業との比較になってしまいますが、日本企業は事業部の権限が強くてIT部門が弱い傾向にあります。責任はあるのにお金やリソースがない。社内下請的な構造で事業側のビジビリティもないし、権限もない。

成塚氏:私もキャリアとしては外資系企業が中心で、日本の企業の方々にITサービスを買ってもらう立場だったので分かります。皆さんご苦労が多い。

高野氏:成塚さんなら分かると思いますが外資系企業は違うじゃないですか。IT部門が強い。ただ、最近CIO同士で話していると、日本企業も徐々にIT部門が強くなってきているタイミングではないのかな、とは思います。

成塚氏:私は日本企業も変わってきたのは、やはり経営トップがITについて理解を深めたからではないかと思っています。今の企業経営においてITがないことは、もうありえないわけですから。

押久保:高野さんが外資系企業から日本企業へ転じたのは、そういう気運からでしょうか?

高野氏:私が外資系企業から日系企業へ転じたのは、これまで外資系企業で学んだ知見を、日本人として日本の企業で使ってもらいたい、恩返しをしたいという思いが強いですね。経営アジェンダにCIOとしての経験を生かして最適な解を出す。そして、自分がこれまで得てきた経験を多くのチームメンバーに共有して、彼らがキャリアを積めるようなサポートもしていく——。

 資生堂では年に1度パートナー説明会をするのですが、今年はDXとITガバナンスを強化するという決意と共に、皆さんのサポートが必要だということで3つのお願いをしました。(1)ベストチームで(2)資生堂の困っていることを解決するベストソリューションを(3)ベストプライスで持ってきてください、と(笑)。

成塚氏:Apptioもグローバルでベストチームを出すことができ、ソリューションをお出しできると思います。ベストプライスはがんばります(笑)。

押久保:日本企業のDXが加速する上で、CIOの役割は重要視されますが、それに伴い求められるパフォーマンスも増していく。経営アジェンダに沿って適切なソリューションを適切な時期に導入・運用する力が求められそうですね。高野さん、成塚さん、本日はありがとうございました。



著者プロフィール

  • 中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

    株式会社エヌプラス代表取締役 デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会、一般社団法人日本編集部の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。

  • 丸毛透(マルモトオル)

    インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。  

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