マイクロソフトの全方位の仮想化戦略
TCOの削減、リソースの有効活用、俊敏性の向上、可用性の向上、これらのメリットを得るためにサーバー仮想化市場が急激に拡大している。このような状況下にあって、マイクロソフトは、2008年7月からサーバー仮想化製品であるHyper-Vの提供を開始した。
Hyper-Vは、市場に出てまだ半年、まだまだ駆け出し的な存在とも言える。しかしながら、市場では大きな注目を浴びていると実感できる。実際、ここ最近顧客からの引き合いもかなり多い。
Hyper-Vの大きな特長は、この製品がサーバーOSであるWindows Server 2008の標準機能として利用可能だということだ。つまり、Windows Server 2008が広く顧客に受け入れられるので、自ずとHyper-Vが普及し、顧客の環境はサーバーの仮想化が"ready"の状態になるのだ。
調査会社などによると、Windows Server 2008を搭載したサーバーの出荷台数は、2009年にはx86サーバー全体の50%を超えるとの予測がある。つまり、今後は新規に出荷されるx86サーバーの半数以上で、サーバーの仮想化がすぐに利用できる状態となっているのだ。
Hyper-Vに世間の注目が集まってはいるが、マイクロソフトの仮想化戦略は、サーバーの仮想化だけではない。増え続けるサーバー、複雑化するデスクトップ管理、膨大な数に上るPCのセキュリティ対応、アプリケーション管理コストの増大といった課題を、さまざまな仮想化技術で解決しようとしている。これらすべてに対応することが、マイクロソフトの仮想化戦略「Microsoft 360 Virtualization」だ。
この全方位での仮想化戦略では、現状4つの製品が中核として位置づけられている。サーバーの仮想化を実現するのは、もちろんHyper-Vだ。そして、デスクトップ管理を強化するのが、デスクトップの仮想化であるVirtual PCおよびMicrosoft Enterprise Desktop Virtualizationだ。さらに、アプリケーション管理コストを削減する、アプリケーションの仮想化を実現するのが、Microsoft Application Virtualizationだ。
また、これまでにも数多くのソリューションを提供しており、実績も多いプレゼンテーションの仮想化もある。これを実現するターミナルサービスを用いることで、アプリケーションを中央のサーバーに安全に格納し集中管理が可能となるのだ。
マイクロソフトでは、これら4つの仮想化を顧客の要求に合わせ、適宜選択し組み合わせて提案する。さらに、これらのソリューションの運用管理を集中化させるのが、Microsoft System Centerだ。既存のSystem Centerによる管理ノウハウと、統合ツールセットを用い、仮想および物理インフラストラクチャー全体の一元的な管理が可能となる。
つまり、仮想化を利用することで、いままで必要なかった仮想化レイヤーというものが1つ増えることになる。その影響で運用管理が複雑化しないようにするためのツールが、System Centerなのだ。