DXの本質をとらえるために
2010年前後を境に、世界中にユーザーを抱えるビッグ・テック企業が台頭し、日本でも“GAFA”、そして“MT SaaS”と呼ばれる企業に追いつき、追い越すための変革が求められ続けています。2018年に経済産業省から「2025年の崖」が提唱されると、多くの企業が「DX」の必要性を認識。コロナ禍の現在では、ニューノーマル時代を生き抜くための鍵として、業種業界を問わずあらゆる企業が経営戦略の中でDXの実現を掲げるまでになりました。
その一方で、DXによる着実な成果を示すことのできる企業は、決して多くないというのが現状です。DXが必要という認識は浸透し、それを実現しようとする動きも多く聞かれる中で、なぜ成果へとつながるケースが少ないのでしょうか。この現状について、本書の中で石角氏は「そもそも『DXとは何か』が理解できていない」「プロジェクトの各段階で表出する3つの『壁』を超えられない」という2つに大別できると述べています。
前者について、本書では昨年ニューヨーク証券取引所に上場した「C3.ai」の創業者トーマス・シーベル(Tomas Siebel)氏の著書を引き合いに、第四次産業革命で起こっているトランスフォーメーションとあわせて、企業における「DX」が何を指しているのかを紹介。「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」「デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)」という3つの概念の差異も交えながら、DXの本質とは何かという命題について明文化されています。
また、モデルナやマイクロソフト、ワシントンポストなどの事例も交えて解説されているため、ITに詳しくないけれどDX推進部署へ配属されたという方でも、具体的なイメージをもって読み進めることができます。