
コロナ禍を契機に業種業界問わずに経営戦略としてDXが掲げられるようになり、AIやデータの活用にもより一層の注目が集まっています。この状況下で、DXを加速させるために専門部門を組織する動きもみられる一方で、全社的な変革が進んでいるという話を耳にすることは少ないのではないでしょうか。そこで今回は、DX推進の参考になる書籍『いまこそ知りたいDX戦略』(石角友愛 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)を紹介します。
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DXの本質をとらえるために
2010年前後を境に、世界中にユーザーを抱えるビッグ・テック企業が台頭し、日本でも“GAFA”、そして“MT SaaS”と呼ばれる企業に追いつき、追い越すための変革が求められ続けています。2018年に経済産業省から「2025年の崖」が提唱されると、多くの企業が「DX」の必要性を認識。コロナ禍の現在では、ニューノーマル時代を生き抜くための鍵として、業種業界を問わずあらゆる企業が経営戦略の中でDXの実現を掲げるまでになりました。
その一方で、DXによる着実な成果を示すことのできる企業は、決して多くないというのが現状です。DXが必要という認識は浸透し、それを実現しようとする動きも多く聞かれる中で、なぜ成果へとつながるケースが少ないのでしょうか。この現状について、本書の中で石角氏は「そもそも『DXとは何か』が理解できていない」「プロジェクトの各段階で表出する3つの『壁』を超えられない」という2つに大別できると述べています。

前者について、本書では昨年ニューヨーク証券取引所に上場した「C3.ai」の創業者トーマス・シーベル(Tomas Siebel)氏の著書を引き合いに、第四次産業革命で起こっているトランスフォーメーションとあわせて、企業における「DX」が何を指しているのかを紹介。「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」「デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)」という3つの概念の差異も交えながら、DXの本質とは何かという命題について明文化されています。
また、モデルナやマイクロソフト、ワシントンポストなどの事例も交えて解説されているため、ITに詳しくないけれどDX推進部署へ配属されたという方でも、具体的なイメージをもって読み進めることができます。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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