全社でのデジタル活用が勢いづく
――2019年5月に入社されてから約2年強が経過しております。これまでに、どのような変化を遂げていると感じていますか。
志済聡子氏(以下、志済氏):入社時から様々な施策を検討しており、2019年の10月に全社横断的なDX推進組織であるデジタル戦略推進部が発足しました。そこでビジョンや戦略、人財育成、組織風土に関わる取り組みを続けて2年ほど経ちましたが、社内におけるデジタルのモメンタム(勢い)が着実に増しています。特に、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」[※1]の発表から約1年後に、新成長戦略「TOP I 2030」[※2]を発表しましたが、ここで掲げた5つの改革すべてにデジタルという文脈が盛り込まれています。これは、個人的にも非常に大きな契機だと感じています。
もちろん、これまでも情報システム部があり、特定部門の中では、いわゆるリアルワールドデータを利活用するためのセンターオブエクセレンスのような取り組みも実施していましたが、“全社的なDX”までには至っていませんでした。他にもAIの活用や勉強会によって、デジタルやITといったものを身につけようとする動きもありましたが局所的な取り組みに留まっており、今回DX戦略の推進を全社的に展開できたことが一番の成果だと考えています。
DX戦略として、「革新的な新薬の創出」「バリューチェーンの効率化」「デジタル基盤の強化」の3つを掲げており、それぞれ一定の成果が得られています。新薬創出であれば、AIを活用した抗体医薬品[※3]の設計や最適化などによる生産性向上が始まっています。また、バリューチェーンの効率化では、工場のデジタル化やデジタルマーケティングなどのプロジェクトがスタート。デジタル基盤においては、クラウドベースの全社データ利活用基盤「Chugai Scientific Infrastructure(CSI)」を構築すると共に、デジタル人財育成のための仕組み「CHUGAI DIGITAL ACADEMY(CDA)」も立ち上がるなど、各戦略に対する成果を、この2年で着々と積み上げています。
――全社的にDXを推進する中で、特に変化を感じる点はどこでしょうか。
志済氏:組織の枠を超えた協業や社員同士の意見交換が活発化していることを感じています。また、中外製薬のデジタルに関する取り組みをメディアに取り上げていただくことで、社内やステークホルダーの見方も変わりつつあります。今は具体的な成果をどんどん活用していく方向へシフトしており、「TOP I 2030」のキードライバーの1つであるオープンイノベーションに貢献できるような、デジタルを活用した取り組みを目指したいです。
特に採用については、データサイエンティストだけでなく、様々なタレントを外部から受け入れたいと考えており、大手のメディアだけでなくnoteやコンセプトムービー、SNSなどオウンドメディアも活用して情報発信をしてきました。一口にDX人財といっても、当社にどのような活躍の場があるのかは理解しにくいと思います。こうした採用活動を通して報酬や待遇だけでなく、やりがいがあるかどうかが仕事選びのポイントになっていることを私自身も学ぶことができました。
実際に採用面接のときには、noteやコンセプトムービーを見たことで興味を持ち、自身のスキルを活かすことを期待して応募してくださる方が多くなったと実感しています。
[※1] 中外製薬ニュースリリースより、「中外製薬、デジタルトランスフォーメーション推進に向け『CHUGAI DIGITAL VISION 2030』を発表」
[※2] 中外製薬ニュースリリースより、「新成長戦略「TOP I 2030」の策定について」
[※3] 特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する抗体の仕組みを利用した医薬品(中外製薬「よくわかる抗体医薬品 」より、「抗体医薬品とは?」)