「モビリティDX」でタクシー業界だけでなく社会課題の解決へ
仕事やプライベートなどで移動する際、いわゆる“流し”のタクシーを見つけて呼び止めることをしなくなったという人も多いのではないだろうか。ここ数年の間でタクシーを配車するためのアプリが続々とローンチされるなど、タクシー関連事業者も大きな過渡期を迎えている。その状況下で「モビリティDX」を掲げ、タクシーアプリをはじめとしたサービスを提供することで存在感を示している企業がMobility Technologiesだ。
2011年に日本初のタクシーアプリをリリースすると、2020年4月1日よりJapanTaxiから社名を改め、DeNAが運営するタクシーアプリ「MOV」や交通事故削減サービス「DRIVE CHART」などを統合。現在はタクシーアプリ「GO」を柱にしながら配車関連事業、広告決済事業などを展開している。同プロダクトマネジメント部 アナリシスグループでデータアナリスト/リサーチャーを務めている井立良子氏は、「乗務員向けのソリューションやスマートドライビングなど多くの事業を展開する中で、タクシー産業を起点に、モビリティに関する課題解決を目指しています」と説明する。
また、少子高齢化などによる地方の交通課題はもちろん、より大きな社会的課題についても同社の技術を活用した解決、「モビリティDX」を推進しているという。このモビリティDXをわかりやすく体現しているのが、タクシーアプリ「GO」だ。「多くのタクシー事業者は、『より多くのお客様を乗せたい』と考えており、お客様とのマッチングを課題として抱えています。これを解決しようとしているのが『GO』です。従来、“流し”のタクシーを探したり、タクシー乗り場に行ったり、営業所に電話をしたりと、お客様もタクシーに乗るために労力をかけていました。また、タクシーの乗務員もお客様を拾うために、人が多そうな場所や時間帯などを経験と勘から導き出すなど、双方にとって非効率な状態が続いていました」と述べる。
こうした需要と供給がアンマッチしている状態を「モビリティDX」によって解決することに取り組んでおり、タクシーアプリの需要は高まっている。実際にコロナ禍で移動する人が少なくなっている状況下においても、アプリでタクシーを呼ぶ人が増えているという。全国のタクシー業界がコロナ禍前の7割程に留まっている中で、アプリによる注文数は倍増。コロナ禍でも移動したいという人は多く、タクシーの乗務員にとっても頼みの綱になっている。
また、AIを活用したドライブレコーダーのサービス「DRIVE CHART」でもモビリティDXを推進しているという。タクシーやトラックなどの商用利用車に本ドライブレコーダーを取り付けることにより、わき見運転や一時不停止など事故につながる行動を発見でき、ドライバーに対して危険運転を注意喚起してくれる。さらに、ゼンリンとの協業[※1]で推し進めているのが、同サービスの映像データを分析することで地図情報のメンテナンスに役立てるという事業だ。ナビゲーションシステムなどの地図データは、常に最新のものへと更新が必要だが多くの人手や工数が必要となってくる。
井立氏は、「日本全国で毎日のように標識や道路状況などが変わっており、鮮度の高い地図データを維持することはとても大変です。そこで、タクシーやトラックなどの商用車が走行する際に取得した画像データを活用し、既存の地図データと実際の道路情報の差分を機械学習により自動抽出することで、地図として更新すべき部分を速やかに特定し、地図データのメンテナンスを後押しする事業を進めています。車両をただ走らせるだけでなく、そこから取得したデータを分析することで課題解決につなげる『モビリティDX』です」と語る。
[※1] Mobility Technologies「ゼンリンとMobility Technologies、タクシーやトラックの映像データから道路変化情報を自動抽出し、高鮮度な地図情報のメンテナンスに活用」