ヒアリングだけでなく実際の現場をつぶさに観察し利害関係者に提案し議論する
データや分析基盤ではなく、仕事に役立つ情報が欲しい。その際には情報そのものが完璧である必要はない。提供されるタイミングも必ずしも完璧である必要はない。重要なのは、実際にそれが業務に役立つかどうかだ。そして、データの利活用で情報をビジネスに役立てるのは、IT部門の担当者ではなくビジネス現場の社員だ。その社員に対し、役立つ情報をIT部門は提供できているかを改めて考える必要がある。
ところで、そもそも情報とは何か。「たとえば明日いくつおにぎりが売れるか。あるいは明日、運動会があるらしいので、おにぎりが売れそうです。または明日原油の価格が跳ね上がるみたいなので、ちょっと対応しなければと。これらが、役立つ情報です」と一志氏は言う。役立つ情報に至るところは、データにより成り立つものだ。
データを分析し、その結果を人間が分かりやすいようにビジュアル化する。これらデータを情報にする手段は、さまざまなものがある。現在では技術が進化して、AIがデータを情報に変えるのをサポートしてくれる。しかし、「どうすれば役立つ情報になるかは、AIには分からない」と一志氏は指摘する。情報を使う人にとって何が役立つか、AIには分からないのだ。
何が役立つかを把握するにはヒアリングをすることになる。しかし、一方的に訊くだけでは本当に必要なことは掴めない。「訊くことにプラスして、実際の仕事のやり方を見せてもらい、つぶさに観察し、さらに訊いた上で提案し議論するのです」と一志氏。そこから仮説を試してみた時に、試したことの効果を測る方法や達成したい目標を決めておくことも重要だと指摘する。そして目標に達しない際にはその原因を追及する。上手くいかない際に、撤退することもあらかじめ確認しておく。その上でフィードバックしながらこのサイクルを繰り返すしかないのだ。
そして実際にビジネスで成果を得るには、利害関係者がいる。その人たちが新たなデータ利活用の取り組みをやりたいと思うことも重要となる。そして情報提供した結果、利害関係者の人たちにも行動を変えてもらうことをあらかじめ決めておく。「ここまでやらなければ、どこを向いて走るのか分からなくなります」と一志氏は言う。