「忌むべきは『名ばかりCIO』」CIOシェアリング協議会 坂本俊輔氏と木場武政氏に訊く“ITの価値”
DXやCIOを取り巻く環境の変化、4年目を迎えて“CIOの知見”の普及へ

CIOの本来の在り方を示し、社会的価値を高め、活躍を促進することを目的として、2019年9月に「CIOシェアリング協議会」が設立された(法人登記は2021年2月)。コロナ禍を経て4年目を迎える中で活動の手応えとともに、その間におけるDX/CIOを取り巻く環境の変化について、同協議会代表副理事の坂本俊輔氏、同理事の木場武政氏に伺った。
CIOの役割が正しく認知されないという焦燥感
──設立から4年目を迎える中で、改めてCIOシェアリング協議会の設立目的から教えていただけますか。
坂本俊輔氏(以下、坂本氏):「CIOシェアリング協議会」は、優れたCIO(Chief Information Officer)の知見や時間を“シェアする”価値を追求し、それによって日本企業のDX推進を含めたIT投資戦略や情報利活用に貢献することを目的として設立しました。その背景には、CIOという職務の役割や価値が社会的に正しく認知されず、それゆえに十分な評価がなされていないという焦燥感、課題感がありました。本来CIOは経営の視点を持ち、DX推進など企業の情報戦略を担う重要なポジションですが、十分に理解されていないために正しく機能していないケースも少なくありません。それゆえに「名ばかりCIO」や「腰掛けCIO」などと揶揄されることもあり、こうした事態はCIOにとっても、DXを推進したい企業にとっても由々しき問題なのではないかと感じていました。
個人の経験からも、「CIOのキャリア」という課題に対して、柔軟な働き方や価値提供の仕組みが提供できないかという思いを抱いていました。私はSIerやITコンサルティングファームなどを経て、2010年にCIOアウトソーシングを提供する株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジーを設立し、ユーザー企業のIT体制強化の活動に従事しています。とても充実した仕事ではあったのですが、部外者である感覚はどうしても拭えませんでした。それが2017年から政府CIO補佐官やIT政策担当大臣補佐官などを務める機会があり、民間企業とはやや異なるものの、ユーザー側組織のCIOに近い立場の“内側”の人間として変革を直接働きかけた際に、コンサルティングとはまた異なるやりがいを感じたのです。そして第三者の視点から、組織の情報戦略にアドバイスするコンサルティングの面白さも再認識するようになりました。
つまり外側と内側、両面からの働きかけを同時に行うという働き方が、こんなにおもしろいのかと気づいたのです。
世の中での転職の動きをみていると、事業会社にいるSEがより幅拾い企業で経験を積みたいとコンサルティング会社に転職したり、一方でコンサルティング会社の人が直接内部からDXに関わりたいと事業会社に転職したり、結局行ったり来たりする方が大勢います。ずっと同じ組織にいると物足りなさを感じつつも、重責から転職という選択肢を持てないCIOも間違いなくいると考えました。そこで、転職という選択肢だけでなく、もっと柔軟な働き方を普及できればCIO自身のキャリアになり、同時に日本に不足するCIOの機能を補える仕組みづくりできるのではないかと考え、CIOシェアリングに至ったのです。

GPTech 代表取締役社長、元政府CIO補佐官 坂本俊輔氏
──異なる立場での経験から導き出されたアイデアなのですね。一方で、木場さんはいかがでしょうか。まさに今、チューリッヒ保険会社のCIOとして活躍されていますが、同協議会の理事も務められています。
木場武政氏(以下、木場氏):CIO協議会が発足する際に、代表理事を務める元メルカリCIOの長谷川秀樹さん(現在は独立後、コープさっぽろ CIOなどを務める)と坂本さんに声をかけていただき、非常におもしろいコンセプトだと思いました。私も長くベンダー側にいて、外部からIT戦略や情報の利活用のサポートをしていた立場でした。チューリッヒ保険会社というユーザー企業に入り、内側からガッツリと取り組む立場になったことで、改めて「CIOとして経験していることを、さまざまな企業に対して助言することで貢献できるのではないか」という思いに気づきました。そんなとき、この話をいただき「CIOをシェアする」という発想がユニークだなと。
今のポジションをキープしつつも、他の業界のユーザーと接する中で様々な刺激や学びを受けることが、自社での活動にもプラスになるのではないかと思いましたし、自身のキャリアにもプラスになり、求めている働き方にもマッチする。さらには、CIO探しに苦慮されている企業に、自分の知見を少しでも役立てられるのは嬉しいことですよね。なんだかベンダー側にいたときの懐かしさやワクワク感もあり、それで二つ返事で参画させていただきました。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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