10年後の“ありたい姿”から逆算し、長期ビジョンを策定
荏原製作所は、1912年にポンプ製品のメーカーとして創業して以来、長年にわたって主力製品のポンプ製品をはじめとして送風機やタービン装置、空調システム、ごみ処理施設など社会インフラを支える様々な製品・設備を提供し続けてきた。近年では半導体製造装置の事業にも力を入れているほか、海外市場にも積極的に進出し、5つのカンパニーを展開するグローバル企業としての存在感も急速に高めている。
そんな同社は2019年、長期ビジョン「E-Vision 2030」を発表した。執行役 情報通信統括部長 兼 CIOの小和瀬浩之氏は、E-Vision 2030を策定した背景について次のように説明する。
「弊社はこれまで『E-Plan』と呼ばれる3ヵ年の中期経営計画を打ち出してきました。この方針に沿って、2020~2022年の3年間の中期経営計画『E-Plan 2022』を2019年に策定したのですが、その際に『10年後の荏原製作所の“ありたい姿”を描き、そこからバックキャスティングする形で中期経営計画を立てるべきでは』との意見が出たため、10年間の長期ビジョン『E-Vision 2030』を策定することになりました」
同社はこのE-Vision 2030において「社会・環境価値と経済価値の両方を向上させることで、荏原製作所の企業価値を高める」ことを謳っている。具体的には、社会・環境価値として「CO2約1億トン相当の温室効果ガスの削減」「世界で6億人に水を届ける」などの目標を挙げるとともに、経済価値としては「ROIC10.0%以上」「売上高1兆円規模」「時価総額1兆円」などの数値目標を掲げており、その一部は既に前倒しで達成しているという。
そして、これらの目標を達成するための具体的な施策として現在取り組んでいるのが、「グローバル経営」のための体制構築だ。年々海外ビジネスの比重が高まりつつある同社では、グローバルでいかにオペレーションを効率化し、人材を適材適所で登用し、各拠点・グループ会社に対してガバナンスを効かせるかが大きな経営課題として浮上しているという。
そこで現在、これらの課題を解決するために全社を挙げて進めているのが、ERP導入によるグローバルでの業務標準化プロジェクトだ。