CRM連携で本人確認などの障壁を取り払い、顧客体験を向上
※下記連載とあわせてお読みいただくことで、SaaS活用の観点をつかんでいただけます。
──イーデザイン損害保険では、お客さま目線でのCX向上を目指して、さまざまなテクノロジーを取り入れているとお聞きしています。どのような取り組みをされていますか。
藤井謙晶氏(以下、藤井):私と滝沢が所属する、お客さまサポート部の主な業務はカスタマーセンターの運営です。元々、センターでは電話のみでお客さま対応をしていましたので、コールセンターの運営がメイン業務でした。その後、SaaSなどを徐々に導入していく過程で、チャットやメール、チャットボット、さらにはFAQツールなども活用しており、いわゆる「ボイス」と「ノンボイス(音声通話以外のコミュニケーション手段)」の統合を進めている最中です。
2021年にセンサー付きの自動車保険「&e(アンディー)」をリリースして以降、お客さまサポート部の役割も段々と変化してきました。Web上に掲載するFAQの作成はCX推進を担当する部門が管掌していましたが、お客さま対応に欠かせないようになっていき、私たちが担当するようになりました。
滝沢豪氏(以下、滝沢):人によるサポートに加え、さまざまなノンボイスのテクノロジーを導入することで「お客さまがいかに利便性高く、疑問を解消できるか」に主眼を置き、そのために変革を進めている状況です。「&e」自体がネット完結型の保険ということもあり、常にお客さまが求めるサポートの在り方を考えてきました。
中山智文氏(以下、中山):たしかに、カスタマーサポートへのチャットボット利用は増加傾向にあります。ChatGPTが登場して以降、効率化をしていきたいというニーズも高まっており、当社への引き合いも増えていますね。
藤井:「&e」の提供直後、自己解決ツールはFAQだけでした。当初、FAQで自己解決できない場合は、有人オペレーターによるチャットに促す動線で設計したのですが、チャット接続前にお客さまがどのFAQを閲覧されたかオペレーター側では分からず、いちからお問い合わせ内容をお伺いしなくてはならないといった課題があり、KARAKURIを導入することにしました。KARAKURI導入により、事前にお客さまの属性や閲覧されたチャットボットとの会話カードの履歴がオペレーター接続時に連携されるようになり、先回りしたサポートを提供できるようになりました。
滝沢:実際にFAQで何が読まれているのかと調べてみると、最も参照されていたのは「問い合わせ窓口の情報」でした。つまり、FAQにある他の項目は読まれておらず、有人オペレーターによる対応を求める傾向にあったのです。その一方で、オペレーターは受付時にお客さまの契約状況などをイチから確認するなど、あまり良い体験を提供しているとは言えませんでした。
中山:そうした状況下、チャットボットであれば、問い合わせ前にFAQを参照するように自己解決を促すことができます。それでも解決が難しい場合にのみオペレーターに問い合わせるような導線を設計できることがメリットですね。
藤井:当社ではCRMとして利用しているSalesforceと連携させることで、お客さまがサイトにログインした状態でチャットから問い合わせすれば、オペレーターが登録情報を確認できるようにしています。つまり、住所や生年月日、契約内容を確認せずにサポート対応を提供できるようになっており、お客さま満足度の向上にもつながっていると感じますね。
滝沢:本人確認において名前や生年月日を入力する行為は、お客さまにとって必ずしも気持ちの良いものではありません。マイページにログインするだけで本人認証が引き継がれるという仕組みを構築できたことは非常に良かったです。
藤井:当社では、2022年8月からKARAKURIを導入しており、今では、チャットボットの回答による“お客さま満足率”の目標値を50%として運用しています。しかしながら、満足度の回答率は伸び悩んでおり、そもそもお客さまがどのように課題を解決したのか可視化ができないなど、VOC(Voice Of Customer)の分析という課題に直面しています。
中山:分析においては、多様な「データ連携」が極めて重要です。たとえば、顧客が問い合わせを行った後に、どのようなアクションを起こしているのか。具体的には、契約に至るかどうかなどの行動データを考慮すべきです。実は、こうしたデータはCRMなどのツールに蓄積されているケースも多く見受けられます。こうしたデータをどのように紐づけ、連携させていけるかが鍵となるでしょう。
たとえば、KARAKURIを利用しているならば、Webサイト上のどのページを訪問しているかトラッキングが可能です。こうした蓄積されてはいるけれども活用できていないお客さまデータを掘り起こし、データを連携していくことが課題解決の糸口になるかもしれません。