ITスキル研究フォーラム(iSRF)は、2009年6月1日~2009年7月31日にかけてIT技術者を対象に実施した「全国スキル調査 2009」の調査レポート速報を発表した。
IT技術者の人材育成を支援する任意団体iSRFでは、法人向けのスキル診断サービス(ITSS-DS、ETSS-DS、UISS-DS)を期間限定で一般に無償提供する「全国スキル調査」を毎年開催している。2002年の開始から数えて8回目となる今年も、自らのスキルレベルを客観的に把握するため、多くの技術者達が参加した。
このうち、ユーザー企業の情報システム担当者を対象としたスキル診断「UISS-DS」には394人が参加した。
調査方法
情報システムユーザースキル標準(UISS)Ver.1.2をベースにiSRFが独自開発したスキル診断システム「UISS-DS」(モデル版)を使用。参加者は、Webブラウザを使って150~200問程度の設問に回答する。
職種・役職
「プロジェクトマネージャ」が15.7%で最も多く、「ISオペレーション(12.9%)」「ISアナリスト(10.7%)」と続く。役職では、「一般社員(39.4%)」「主任・係長(25.4%)」「次長・課長(22.6%)」と現場の担当者が中心。30歳~45歳の中堅・ベテラン層を中心に幅広い年齢層が参加している。
スキル面
UISSで定義されている「キャリアレベル」をベースに、「コアスキル(行動姿勢)」「共通テクニカルスキル(IT関連の基礎技術)」「専門テクニカルスキル(各職種固有の技術)」など6つの指標を総合して、IT技術者としてのスキル成熟度を7段階で評価するスキルレベル調査は、全体平均が3.2という値となった。
レベル3~4はミドルレベルと定義されており、「業務のリーダーとしての経験・実績があり、独自の専門スキルを有し、そのスキルを活用することによって独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル」にあたる。参加者は53.1%がこのレベルに該当した。
「業務のメンバーとして上位レベルの指導の下、業務上の課題の発見と解決を行なう」レベル1~2のエントリレベルは33.5%、「業務の責任者として経験・実績があり、実施に必要なテクノロジ、メソドロジ、ビジネスを創造し、リードする」レベル5~7のハイレベルは8.5%という分布となっており、参加者の多くは自らの業務を自律的にこなせるレベルが多い一方で、際だって専門性の高い人材は比較的少ないようだ。
なお、職種別に見て平均スキルレベルが高かったのが「ISストラテジスト(4.4)」「プログラムマネージャ(3.7)」「プロジェクトマネージャ(3.6)」。一方、「ITスタッフ(2.0)」「ITオペレーション(2.4)」といった職種では平均レベルが低い傾向が見られた。
意識面
「現在の自分の仕事のやりがいについてどう考えるか」という問いに、58.7%が「大いにやりがいたがある」または「やりがいがある」と回答。「ふつう」と回答した30.5%を合わせると9割近くの参加者が業務に対して前向きな姿勢で取り組んでいることがうかがわれる。比較的意識の高い層が調査に参加しているものと考えられるが、明るい結果と言えよう。
一方で、人材育成の面では不満もありそうだ。全体の81.2%が「職場の要員のスキルレベル」が不足していると回答する一方で、76.2%の「会社で1年間に受ける教育・研修日数」は5日未満にとどまる。技術者のスキルレベル向上のためには、ある程度の教育機会を確保するよう対策を打つ必要があるのかもしれない。
詳細な調査結果については、iSRFのホームページに掲載される予定だ。