クラウドコンピューティングでコスト削減とリスク管理、サービス品質の向上を実現
続いて、日野氏はサービスマネジメントとクラウドの関係性に言及する。「新規サーバー投資額は2012年までの16年間ほぼ変わらない一方で、サーバーの運用管理コストは約8倍に増えています。その原因のひとつは導入済みのサーバー台数の増加でしょう。それにも関わらず、サーバー資源の実際の利用率については、ここ20年間、15%~20%で推移しており、ほとんど改善されていません」(日野氏)
90年代前半メインフレームが終焉を迎えた時代から、コスト削減・効率化を目指したダウンサイジングや、オープン系のサーバーの導入が増えはじめた。結果、必要なもの単位でITC資源を調達することになり、極端な例では部門ごとにハードやOS、ミドルウェア、アプリケーションも別々に管理するようになった。サーバー資源を効率よく使いたい場合、共有が重要だが、ハードウェアのメーカーやOS、ミドルウェア、ソフトウェアが異なると統合は難しくなるのが実情だ。
「仮想化や標準化を進めた上で、クラウドコンピューティングによる自動化を行うことで、サービスの品質向上、そしてコスト削減も可能になります」。現状打破の鍵は、サービスマネジメントを使ったクラウドにあると日野氏は語る。
IBMの社内調査によれば、仮想化、標準化、自動化によって、サーバーのストレージ使用率は従来の約4倍に高めることが可能だ。ユーザー自身がシステムに要求を行い、要求したものを取得するセルフサービスもクラウドの環境の中では十分にできる。必要な環境の設定も、従来数日かかっていたものが数分でできるようになるなど資源の利用効率を数倍に向上させられる。
開発途中の技術を社員が評価する同社のプログラム「テクノロジー・アダプション」では、従来の数千台規模のサーバー環境を実際にクラウド化することによって、ハードウェア、人件費、設備費において84%もの削減効果を生んだ。
クラウドコンピューティングでは、コストだけでなく当然リスクも管理しなければならない。コンプライアンスの観点からパブリック・クラウドを使ってはいけないようなものもある。プライベート・クラウドは、運営の主体、運用の主体が各企業となるため、リスクはパブリックに比べると小さいが、複数の事業、複数の部門が共通の資源を使い効率化を高めるという観点ではリスク管理をより強化する必要がある。
「コスト削減、リスク管理、ユーザーのサービス品質の向上。IBMの目標を実現するものがクラウドコンピューティングです。本日のイベントでは、サービスマネジメントとクラウドというテーマを中心に多くのセッションを用意しています。サービスマネジメントにとってのクラウドの重要さをご理解頂ければ幸いです」と語り講演を終えた。