クラウド・コンピューティング時代のサービスマネジメント~「Pulse Japan 2009 Autumn」基調講演
「Pulse Japan 2009 Autumn」セッションレポート
サービスマネジメントをテーマとしたIBMのイベント「Pulse Japan 2009 Autumn」が11月5日に開催された。日本アイ・ビー・エムの専務執行役員 三浦浩氏の挨拶から始まった基調講演では、ソフトウェア事業 Tivoli事業部長 日野義久氏による『クラウド・コンピューティング時代のサービスマネジメント』と題した講演が行われた。
クラウドコンピューティングでよりスマートな企業戦略を
開催の挨拶のため登壇した三浦氏は、クラウドコンピューティングの現状を概観。インターネット規模のパブリック・クラウドと、会社や組織で行うプライベート・クラウドの違いについて利用形態の違いなどを含めて解説した。

同氏によればクラウドに求められる要件は、「自動化」「標準化」「リソースの共有化・仮想化」。共有化・仮想化されたリソースが標準化されたテンプレートで自動的に提供されることがクラウドであり、これらの要素が満たされることにより、利便性が向上し、コスト削減に繋がるという。
サービスマネジメントの観点からも自動化、標準化は語られている。三浦氏は、企業戦略にあわせてすばやくサービスを提供することが成功に結びつくと述べ、サービスマネジメントをベースにした同社のクラウドコンピューティングを紹介。日野氏の基調講演に繋げた。
パブリック・クラウドの使用に抵抗感を持つ企業は多い
続いて登壇した日野氏は、IBMが全世界の企業の経営者やCIOを対象にした、企業強化のためのインフラの革新の取り組みとその内容に関するアンケート結果を示した。

この調査によれば、仮想化やサービスマネジメント、クラウドなどの取り組みが上位を占める世界平均に対して、日本ではセルフサービスポータルやサービスマネジメントを取り込んでいくクラウドコンピューティングに多くの取り組みがされているという。また、IBM主催のセミナーに来場した管理職以上を対象としたアンケート結果では、25%がクラウドを検討している、もしくは既に取り組んでいることがわかった。
これらの結果について日野氏は、「日本企業においては重要な情報や顧客情報、財務情報を社外で処理することに抵抗がある。その一方で、効率化を求められているため、プライベート・クラウドのニーズが高まっている」と結論付けた。
企業のさまざまな要求に応える、IBMのクラウドソリューション
IBMがここ最近取り組んできたクラウドの事例には、入試の際にピークを迎える事務処理を改良させるためにクラウドを活用する工学院大学、約144億ページビューのWebサイトの分析を行う早稲田大学などがある。豊田通商は、IBMの協力のもと、産業廃棄物を最終処分するまでの処理状況を一貫管理するASP型クラウドシステムを構築した。金融業界では、IBMの「デスクトップ・クラウド・サービス」を三菱東京UFJ銀行がいち早く採用している。
また、IBMではクラウドソリューションの提供も始めている。例えば、Webベースのスケジュール管理に加え、コラボレーションやWeb会議、SNS機能を提供する『LotusLive』。また、サーバーを時間単位で貸し出す『IBMコンピューティングデマンド』もある。同サービスを使ってデジタル画像処理を行っているライズ社は、短時間での業務処理を低コストで実現している。このほか、データのバックアップと復旧を効率化させるストレージクラウド『IBMリモート・データ保護』も紹介された。
『IBM CloudBurst バージョン1.2』の紹介も行なわれた。クラウド環境の構築には、さまざまな製品の選定やセットアップなど多大な労力と時間がかかる。これらの問題を解消すべくハードウェアからソフトウェアまで全てをパッケージした「IBM CloudBurst」は、購入してすぐにクラウドが利用できる。講演中は、特別会場から実況中継で三浦氏によるCloudBurst除幕の様子も上映された。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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