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【日清食品×楽天】社内にデータ活用を浸透させる第一歩は“共通言語化” 両社が実践する人材育成術とは

自社のデータドリブン経営が成功しないのはなぜか?両社が直面した課題とその打開策を明かす

日清食品が進める“全社統合データベース”

 現在に至るまでの取り組みを振り返り、高橋氏は「共通言語化が進んできていると思う」と語る。営業担当は「案件をいくつ獲得した」「売上を何億円上げた」と数字を追いがちだが、それはKPIではない。そこから経費を削り、最終的に手元にいくら残ったのか。限界利益(マージナルプロフィット)を考えるよう呼びかけ続けた結果、今ではそれが楽天社内の共通言語になったという。

 「トップ自身が継続して粘り強く伝えることで、共通言語化は進んでいくと思います」(高橋氏)

 日清食品においては、「以前はExcelやAccessでやってしまっていたものを、共通のデータベースで正規化した形で管理し、それをBIツールで可視化するほうが効率的だという理解が深まりつつある」と成田氏。これまで、Excelなどで作業していた部分が、やっと改善されてきたと感じているそうだ。

 最後に、水上氏がデータドリブン経営成功の鍵を両者に尋ねると、「経営者のWillは大事。私もこれまでWillは伝えてきたが、今思い返せば、『それまでのやり方をすべて捨てろ』というくらい強く伝えたほうが、全社で同じ仕組みを導入しやすかったかもしれない」と高橋氏。

 加えて、同氏は“気づかせること”の重要性も指摘。楽天のような大規模な企業では、時に自分たちのやり方に固執してしまうことがある。しかし、何かをドラスティックに変えようと思ったら、時には「その方法、時代遅れかも」といった外部からの指摘も必要だと語った。

 成田氏は、現在日清食品が構築を進める“全社統合データベース”に言及。これは、全社的なデータ利活用を加速させるため、あらゆる業務システムのデータを一元的に集約するものだ。「システム間がつながっていないと、データを収集することに非常に労力がかかる。全社統合データベースを構築することによって、それを解消できる」と同氏。これにより、中心にあるMDM全社共通マスタ基盤でデータを正規化するという。完成は2024年中を予定しており、「BIツールで従業員が簡単にデータを参照できる環境が整い、データ活用の潜在的なニーズをこのプラットフォーム上で形にできる」と期待を寄せた。

 加えて、NISSIN AI-chatも整備。全社統合データベースの中身を生成AIが参照し、自動でレポーティングするシステムだ。たとえば、「あなたは高度な統計分析官です。与えられる時系列データについて分析し、データの動向およびインサイトを教えてください」と指示すると、カップヌードルなどの製品の出荷実績に関する分析レポートを、トレンドやピーク、季節性、周期性、前年同月比較などでまとめて詳細なレポートを作成してくれる。これは従来、データサイエンティストが専門にしていた仕事だ。現在のGPT-4oはデータの比較や類推する能力が十分ではなく、正しくない回答が返ってくることもあるが、技術は日進月歩。

 「5年後、10年後には、世の中のデータベースをAIが分析し、自動でレポーティングするのが当たり前になる時代が来ると考えています」(成田氏)

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この記事の著者

古屋 江美子(フルヤ エミコ)

フリーランスライター。大阪大学基礎工学部卒。大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、顧客管理システムの運用・開発に従事したのち、ライターへ転身。IT・旅行・グルメを中心に、さまざまな媒体や企業サイトで執筆しています。Webサイト:https://emikofuruya.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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