国産LLMは使い分けることで効果を発揮?
一方で、「現段階でも国産LLMの特徴や強みが生きるユースケースはあるのではないでしょうか」とも同氏は述べる。特に多くの国産LLMが持つ「軽量・コンパクト」という特徴は、実装の自由度にメリットがある。前述のようにセキュリティ上の理由からAIモデルを自社環境で運用したい場合や、処理時間の要件がシビアなためローカル環境ですべての処理を完結させたいようなケースで強みを発揮するだろう。
また、業界や分野ごとに高度な専門知識を学習させたLLMも、今後ニーズが広がる可能性がある。たとえば、創薬の分野では既に分野特化型AIの研究が行われており、今後も医療や研究開発、法務など高度なドメイン知識が求められる領域では、専門分野に特化した国産LLMが強みを発揮できる可能性がある。
もちろん海外メガテックベンダーが先行する汎用型LLMの有用性も、今後高まることこそあれ低下することはないだろう。従って、生成AIを使うユーザーの立場から見た場合、今後は用途に応じて汎用型LLMと特化型LLMをうまく使い分けることが活用のポイントになるのかもしれない。
ただし、今後どのようなAI技術が台頭するにせよ、「それによってどのような課題が解決できるのか」という点に常に立ち返ってユースケースを探ることが国産LLM躍進のカギを握るのではないかと小林氏は強調する。
「課題先進国である日本が抱える少子高齢化や人手不足などの社会問題を、AI技術を使っていかに解決できるか、そのために何ができるか。ここにこそ、今後の国産LLMの勝ち筋があるのではないでしょうか。ただしその具体的な形は、これから生成AIの活用が本格化していくに従い、徐々に明らかになってくるのだと思います。生成AIが登場した当初は、短期間のうちに一気に世界が変わるのではないかと騒がれましたが、真に価値を発揮するまでにはもう少し時間がかかるのではないかと個人的には見ています。今後も変化し続けるLLM市場をウォッチしながら答えを探っていく必要がありそうです」(小林氏)
