ユーモアたっぷりの野次を
野次と言えば、自民党結成の功労者として知られ、「策士」、「政界の大狸」との異名を取った三木武吉も、野次に関する数々の逸話を残した。1920年6月、原敬内閣の大蔵大臣である高橋是清が、戦艦8隻、巡洋艦8隻の海軍の拡張を説明中、「国防のごときは、1年限りの経費で済まないものである。海軍においては8年」と言った瞬間、「達磨は9年」との野次が飛んだ。若き日の三木である。
つまり、禅宗の祖とされる達磨大師が、中国の嵩山少林寺で無言のまま9年間、壁に向かって座禅し、悟りを開いたという「面壁9年」と、高橋のニックネーム「達磨」を引っ掛けたものだ。このタイミング抜群の野次に高橋本人も苦笑し、一時、演説がストップしたという。
野次は「議場の華」と言われる。喧喧諤諤互いに激しい論戦を展開するのは大いに結構だが、程度の低い「雑音」や「騒音」ではなく、寸鉄人を刺すようなセンスのいい野次、だらけた議場を一瞬にしてピリッとさせる野次を期待したい。居眠りする大臣たちの眠気覚ましにもなる。(敬称略)