ネットワークは依然として中心にある AI時代でも変わらないもの
──チェック・ポイントを1993年に創業し、2024年末にCEOを退任しました。現在のお気持ちを教えてください。
チェック・ポイントを創業してから約32年が経過し、そろそろ私も昇進していいのではないかと思いました(笑)。退任までの間、数年がかりでチェック・ポイントに相応しいリーダーを探してきて、ナダヴ・ザフリール(Nadav Zafrir)にバトンを渡すことができました。
ナダヴはパッションをもって仕事に取り組み、エネルギッシュでカリスマ性があるだけでなく、ビジョナリーな人物でもあります。面接の過程で特に良いと思ったことは、リスクをとって未来に賭けられるだけでなく、慎重に考え、ミスを最小限に抑えることの重要性も理解していること。ミスを最小限に抑えることは、ミスが発生して修正することよりもコストがかかりません。
現在、CEOを退いてまだ2ヵ月(取材当時)ですが、将来のことを考えながら新しいことを学んでいます。そして、これまでよりも大きなものに投資ができることを楽しんでいます。
これまでを振り返ると、チェック・ポイントは大きく2つのことを成し遂げました。
1つ目は成功を収めたこと。我々は急ピッチで成長し、創業3年で上場企業となりました。2つ目は約30年の間、成長を維持してきたこと。上場前は年間の売上高が1000万ドル程度でしたが、現在の売上高は25億ドルです。この間さまざまな課題を乗り越え、新たなイノベーションを起こしてきました。
実はテクノロジー分野において、我々ほど長く存在している企業は非常に少ないのです。正確な数字はわかりませんが、MicrosoftやOracle、SAPなど20〜30社ぐらいでしょう。毎年数千ものスタートアップは生まれますが、30年後も存在する確率は非常に低いのです。
また、その2つを成し遂げる中で、インターネットを安全にすることもできました。今日、人々はネットワーク上でエンターテインメントや買い物、銀行取引まで、さまざまなことを行っています。さらに我々は巨大な産業を生み出しました。約32年前には「サイバーセキュリティ」「インターネットセキュリティ」といった産業分野は存在せず、チェック・ポイントが最初の製品やビジネスモデルを作り、チャネルを開拓してきたのです。
──今年のCPXでは「ハイブリッド・メッシュ・ネットワークセキュリティ」がテーマの1つとなりました。日本はオンプレミスからクラウドへの移行において、米国などと比べると遅いと言われていますが、日本企業はどのようにこのハイブリッド・メッシュ・ネットワークセキュリティを活用できるでしょうか。
オンプレミスやクラウドについては、さまざまな見解があります。そもそもクラウドでセキュリティ対策をすることは、セキュリティの観点から見て本質的な大きな欠点があります。それはデータプライバシーを保持する必要があるのに、データを別の場所に送るという矛盾であり、本来は自分たちでデータを保持すべきでしょう。またクラウドを経由すると速度にも影響を与えます。一方、クラウドには多数の新しいサービスがあり、ネットワークを強化する原動力にもなっています。
つまり現実に目を向けると、ネットワークは依然として“接続性”の中心にあるということ。今はAIブームが到来していますが、AIシステムも完全にネットワーク化されていますよね。
加えて、ネットワークはオンプレミスだけではなくなっています。異なるデータセンター、リモートにいるユーザーなどにも接続しています。だからこそ、チェック・ポイントのハイブリッド・メッシュ・ネットワークセキュリティは、ブランチやデータセンター、クラウドなどを安全に連携するためのアーキテクチャとして機能することでしょう。
なおセキュリティ業界では“統合”がトレンドとなっていますが、ハイブリッド・メッシュ・ネットワークを用いることで、一貫性のある形でネットワーク全体を保護可能です。