データ管理が必要とされる背景
企業は新たな法規制や規制緩和、市場のグローバル化、M&Aや事業の統廃合、市場や消費者ニーズの多様化など、これまで以上に急激な経営環境の変化への対応を迫られている。しかし現在のIT システムは、このような変化を見据えて構築されておらず、その時々の構築手法やアーキテクチャを採用し、組織や目的別に構築されているのが現状である。
このようなシステムでは、急激な環境変化に迅速かつ低コストで対応することは困難となっており、本来はビジネスを支えるためのITが逆にビジネスの足かせとなりかねない状況となっている。こうした状況下において、IT システムには様々な対応が求められているが、特にデータ管理と情報活用に関する対応として、以下のようなニーズが発生していると考えられる(図1)。
- M&Aや事業の統廃合に伴うシステムおよびデータの統合や集約化
- 法規制や内部統制に対応するためのデータの整合性や正確性の確保
- より迅速な意思決定のための短いタイミングでの情報取得
- 経営効率を高めるためのビジネス視点での情報分析
- システムのコスト削減と変化対応のためのレガシーシステムからの移行
- ビジネス機会拡大のための複合的な情報分析
これらのニーズに対応するためには、システムごとに分断かつ重複しているデータを整理し、データ品質の向上と多様な情報検索および分析ニーズへの対応を可能とするデータ管理が求められる。
ここで、企業のデータ管理と情報活用に対してどの程度のニーズを持っているのかを、ITRが2009年10月に行った最新の調査である、「IT投資動向調査報告書2010」で確認してみる。
主要なIT 動向について、2009 年の調査では図2 に示した17 項目を取り上げ、それぞれについて重要度および実施状況について尋ねた。重要度指数では、ここ数年トップであった「日本版SOX法などの法令対策/内部統制の強化」が引き続き首位となったが、これと並んで「ビジネスプロセスの可視化・最適化」が3.2と高い値を示したのが大きな特徴である。
そのほか、「マスタ・データの統合」「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」とデータ管理や情報管理に関係する4項目はいずれも重要度が高く、これらの項目に対して企業が高いニーズを持っていることがわかる。
次に、これらの4項目を含む重要度が高い結果となった6項目について過去からの実施状況の変化を見てみる。その結果、これら4項目の実施率は過去から変化が見られない。つまり、企業ではデータ管理や情報活用の向上に強い関心をもっているが、実際は思うように取り組みが進展していない状況が見えてくる(図3)。