OracleのAI、優位性は「プライベートデータ」と「RAG」
AIモデル構築におけるもう一つの段階は、構築されたAIモデルを使用し、人類にとって最も「困難で根深い問題」を解決することだ。しかし、ここには課題がある。それは、現在構築されている主要なAIモデル(ChatGPT、Claude、Grokなど)はすべて、インターネット上の公開データだけで訓練されていることだ。これらのモデルが真の価値を発揮するためには、企業が所有するプライベートなデータを活用して推論することが欠かせない。
この点で、Oracleは重要な役割を果たすとして、「高価値なデータのほとんどが、既にOracle Databaseに存在しているから」だとエリソン氏。そのためにOracleはデータベースを改良し、既存のデータをAIモデルが推論に利用できるようにした。

(写真提供:Oracle)
Oracle AI Worldで発表された「Oracle AI Data Platform」および「Oracle AI Database(Oracle AI Database 26ai)」は、この課題を解決するために設計されている。新しいデータベースは、単にAIが流行しているからではなく、RAG(Retrieval-Augmented Generation)機能を搭載しているから「AI Database」と名付けられた。
RAGの主な機能は、AIモデルが訓練されていない非公開データを取り込み、理解できる「ベクトル形式」に変換することで、推論に利用できるようにすることだ。これによりユーザーは、自分の選んだマルチモーダルモデル(Grok、ChatGPT、Llama、Geminiなど)をOracle Cloud内で使用し、プライベートデータを外部に共有することなく、セキュアに推論できる。さらに扱えるものは、データベース内のデータに限定されない。Oracle AI Databaseは、OCI Object StoreやAmazon Cloud Storageといった他のクラウドストレージ内にあるデータに対してもベクトル化を行い、AIモデルが推論できるようにする。
Oracleのソリューションが他のクラウドと一線を画す点は、OracleがスケーリングされたエンタープライズアプリケーションとスケーリングされたAIインフラストラクチャの両方を提供できる、唯一のクラウドベンダーであることだとエリソン氏は主張した。他社のクラウドベンダーはAI技術を開発しているものの、Oracleのように産業全体やエコシステム全体を自動化できる大規模アプリケーションを構築していないという。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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