業務は“AI社員”に任せる時代へ──ServiceNowのAI Platform刷新とガバナンスの真価
ライセンスモデルを一新 独自単位「Assist」に基づくハイブリッドモデルに転換
ガバナンス強化を見越した、アーキテクチャの見直し
フロントエンド強化の意味では、ヘッドレス対応もある。原氏はServiceNowのヘッドレスには2つのパターンがあるとした。
まず1つは、ServiceNow自体のUIを介さず、TeamsやSlackなど、外部の会話型ツールから機能を呼び出すもの。以前から同様の操作自体は可能だったが、より使いやすくするため新しく「ServiceNow Action Fabric」が提供になった。Action Fabricは、MCPやA2Aといったプロトコルに対応しており、他社AIエージェントからの依頼を受けて業務を実行することも、逆にServiceNowが他社AIエージェントに呼び出されることにも対応する。
もう1つは、ワークフローを呼び出す主体が人間ではなく他社のAIエージェントであるケースを想定してのパターンである。「ITに関する依頼はIT部門へ」のようなEmployeeWorksのルーティング機能を、UIから切り離す役割も担う。
このような製品アーキテクチャの見直しは、自社開発とM&Aを組み合わせて進めている。最もわかりやすいUIでは、2025年12月のMoveworks買収で得た機能統合で、会話型ファーストを実現した。また、VezaとArmisの2社を買収し、AI Control Towerへの統合を進めている。その狙いは、今後のAIエージェントガバナンスの重要性を見越しての強化にある。
Vezaはアイデンティティセキュリティの製品で、人間、AIエージェント、デバイスのどれであってもそれぞれのIDを区別し、アクセスを制御する。裏側で動いているのがVezaのAccess Graphである。これは、誰がどのデータやシステムにアクセスし、何ができるかを可視化し、リアルタイムでリスクを特定して自動修復のワークフローで対処できるようにする。
VezaがIDベースでモニタリングするのに対し、Armisはアセットベースで環境全体をモニタリングする違いがある。Armisでは、ITおよび非ITのアセット情報をリアルタイムに収集し、可視化。また、AI Control Towerをガバナンスプラットフォームとし、AIインベントリーマネジメントを強化する。
原氏は「企業内のAIエージェントの自律性が高まると、何か問題が発生したとき、どうしてそうなったのか、説明できるようにしておかなくてはならない。AIエージェントの挙動のエビデンスをログとして残しておくことが必要になる」と説明した。これ以外の機能拡充も含め、AI Control Towerの強化は、運用中の「もしも」に備えて説明可能な状態にしておくためのものになる。
図3:AIガバナンス強化とAI Control Tower(出典:ServiceNow)
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ライセンスモデルを刷新、独自単位「Assist」を導入
ServiceNowは「AI Everywhere」ビジョンの一環として、ライセンスモデルも刷新した。新ライセンスモデルにおけるエディションは、「Foundation」「Advanced」「Prime」の3つになる。従来の3つのエディション構成は「Standard」「Pro」「Enterprise」の3つと数こそそのままだが、単に名称だけ変わったわけではない。原氏は、最大の変化をAIがオプションではなく、どのエディションでも標準機能になった点と説明した。
図4:3つの新ライセンスエディション「Foundation」「Advanced」「Prime」(出典:ServiceNow)
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さらに、シートライセンスを基本とする定額課金モデルから、「Assist」という独自単位に基づく従量課金モデルを併用するハイブリッドモデルへと転換した。ただし、定額制を完全に廃止するわけではない。一定の範囲までは自由にAIを利用できるプールを用意し、超過した場合に追加料金を請求するようにした。定額制は予算計画を立てやすい一方、従量制は利用拡大時に費用が青天井になりやすい。どちらも一長一短あるため、ハイブリッドにすることで、予見可能性と柔軟性の両立を図った。
Assistという独自単位を採用したのは、LLMごとに異なるトークンコストの差を吸収するためでもある。ServiceNowは主要LLMに対応するマルチモデル戦略を採用しており、モデル提供元のようなトークン課金を一律に採用することが難しい。Assistは、ServiceNowのAIエージェントがタスクをどれだけ支援したかを基準とする単位として位置付けられている。実際にどれだけのAssistを消費するかは、業務の内容がどれだけ複雑かで変わる。
実は、新しいライセンスエディションの3つは、図1で示した3つのAIエージェントのユースケース階層に対応している。まず、要約や分類のようなタスクでの利用を想定している場合はFoundation、入社オンボーディングのようなワークフローでの利用はAdvanced、サービスデスクスペシャリストとしての利用ではPrimeといった具合で、AIエージェント利用の成熟度に応じてエディションを選べる。4月に変わったばかりとあって、まだすべての顧客が新ライセンスに切り替わったわけではない。3〜5年の長期契約でServiceNowを利用してきた顧客は、更新のタイミングで新モデルへの切り替えを進める。
プール分のAssistを使い切り、想定以上の請求が来ないかが気になるところだが、事前にユースケースごとの利用シミュレーションを行い、利用回数に応じたAssistを見積もる。エディション規定の標準の範囲内であればそのままだが、それ以上の積極的な利用が想定される場合は、従量分のAssistを事前に購入することになる。また、運用後は前述のAI Control Towerで、AIエージェントの利用状況が可視化されている。今後は、セキュリティの観点だけでなく、費用や組織への貢献度の観点から、ビジネス価値の創出が実現できたか、厳しく問われることになるだろう。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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