自律型支出管理の前提は、データを一つにすること
SaaS(Software as a Service)は、ソフトをクラウド経由で提供し、人が操作して業務を進めるモデルだ。これに対してAgentic as a Serviceは、人がソフトを操作するのではなく、AIエージェントが業務を遂行し、成果を届ける会社のあり方を指す。その土台にあるのが、20年かけて積み上げてきたデータの厚みだ。AIブームに乗じて後から参入してくる競合との違いも、ここにかかっている。
反町氏によれば、プラットフォームを一気通貫で活用する顧客は支出10億ドルあたり平均3,000万〜4,000万ドル(約3〜4%)の削減効果を得ており、AIエージェントの活用が進むとその効果はほぼ倍増するという。反町氏はこれを、支出を自前でコントロールするための実行手段だと位置付けている。
ただし、データの厚みがどれほどあっても、各企業が自社のデータを流し込み、使いこなせなければエージェントは動かない。バラバラな支出データを一つにまとめ、エージェントが読める状態まで整える作業は、各社が自ら引き受けるしかない。その地道な道筋を8年かけて示してきたのが、三菱重工である。
三菱重工の「グローバルプラットフォーム導入」
三菱重工は2026年4月に発表された、AIを活用した支出管理改革で成果を上げた企業に贈られるCoupaの「Trendsetter Award」で、世界9社のうちアジア太平洋(APAC)地域の代表に選ばれ、日本企業として初めて受賞した。世界30カ国141社にCoupaを導入し、AIによる不正検知の仕組み「Spend Guard」で購買データを横断的に分析し、二重支払いの防止や不正支出の発見、間接費の見える化によるガバナンス強化につなげたことが評価された。
受賞の裏側には、AI活用の前に積み重ねた長い組織変革の時間がある。三菱重工バリューチェーン本部SCM部部長の岩松弘記氏は、この8年間を振り返りこう語った。
「当社の場合、10年ほど前までは間接材に関しては日本国内のシステムを使って文房具等の購買を行う程度のカタログ購買しか行っておりませんでした。そのため、グローバルで見ると各国バラバラな調達を行っている状況でした」(岩松氏)
経営陣から「クラウド型のグローバルプラットフォーム導入を検討せよ」との指示を受け、2016年に米国へ調査ミッションを送り、先行導入していた他社のベンチマークを経てCoupaを選定した。Coupaの本拠地である米国のグループ会社を皮切りに、米国5社で導入を始めたのが2018年だった。
ここから先は、理屈通りには進まなかった。「2019年頃からグローバル展開を開始したのですが、当初はボトムアップでの導入提案だったため、欧州のグループ会社22社に声をかけても最初は6社程度しか同意が得られませんでした」と岩松氏は振り返る。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- 三菱重工が8年でグローバル141社に展開した「支出管理改革」とは?
- 稟議突破から“えこひいき”による定着まで──製造/不動産/老舗香料の3社が明かす「Box徹...
- 出社回帰にともないLINEヤフーがオフィスを新設、一部社員からの反発に「最適な環境」の提供...
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
